白鳥の歌”出会い・そして修練の時10。 | ルチアーナの音楽時評・アラカルト。

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40年以上に及ぶ音楽家としての筆者の活動と
その経験から得た感動や自らの価値観に基づき
広く芸術、エンターテイメント等に独自の論評を
加えて参ります。現在小説 愛のセレナーデと、
クロス小説 ミューズの声を随時掲載中です。
こちらもご覧頂ければ幸いです。

私はジャンルを問わず若いミュージシャンが好きだ。けわしい試練の道筋ではある。音楽家など早々お勧め出来る仕事ではない。しかしひとたびこの世界に入ったならトップを目指す気概を持って日々精進しなくてはならない。必要不可欠の事だ。これは私自身が戒めて来た哲学に他ならない。彼女達のサウンドにはそうした精神が満々ている。ひたむきな心を体現した音楽ほど美しいものはないのだ。私達はそれから約30分ほど続いた彼女達のパフォーマンスを一音たりとも聴き逃す事なく享受した。ライヴは終了となり撤収にかかった二人に私は話かけてみた。相当数にのぼっていた聴衆も終了と共にはけ、今は私達3人だけがまだ彼女達のそばに寄り添っている。私(市澤)「いや~堪能したよ!君達、本当に
素晴らしいじゃない。」そう言う私に二人は満面の笑みを浮かべて「うゎ~ありがとう御座います。」と答え、よかったら私達のCD如何でしょうと続けた。中々商魂たくましい。これも又良い。私は彼女達のCDアルバムを種類別で2枚購入した。そして尚も続けた。
「君達とは何か離れ難いものを感じるんだけれどね。だから又、何かライヴとかイベントがあったなら差し支えなければ連絡をくれないかな!出来る限り又、聴かせてもらうので…。」私はそう言い、住所と名前だけが書かれたシンプルな名刺を二人に渡した。二人は「わぁ~、こちらこそ是非是非…!必ず連絡します。ありがとう御座いました。」と明るく返答するのだった。サヤが言った。「あのね~。このおじさんとこっちのおばさん…歌とピアノ凄く上手いんだよ…!。」余計な事を言わなくても良い!そう思ったが既に遅しだ。「そうなんですか?え~、音楽の先生か何かされているんですか?」聞かれてしまった。「まあ、そんなとこかな…!」私はそう言ってその場をしのいだ。しかしやはりこの子達も私の事は知らない様だ。私の引退はこの国でもそこそこニュースにはなったのだが…。さあ、そろそろ村田さんの迎えがくる頃だ。所定の場所へ赴かねば…。別れ際、私は今日エンディングで彼女達が歌ったオリジナルの曲名を聞いた。【永遠の愛・夕日への誓い】。中々スケールの大きいそして美しいバラードだ。“永遠の愛を誓った君への想いを今ここで示そう熱いキスで…!目を閉じた君の頬にそっと手を当てながら、夕日を受けて約束するよ!明日を君と共に生きる事を!そしていつか必ず命をかけてあげるよ。幸せを…!君だけの為に…!哀しみを消して喜びに変えるその為に…!”熱き心、愛の情熱を歌った彼女達のオリジナル!今夜は素敵な夜になった。そしてこの若きデュオNoonMooonの二人(Noi&Myu)はこの後、私達、そしてサヤの運命に少なからず関わる事ととなる…。出会いとは誠に不可思議なものだ。村田さんは時間通り私達を迎えに来てくれた。いつもながら几帳面で実直な対応だ。サヤも妻もたかが小一時間程でNoonMooonの二人とすっかり打ち解け再会を約した。そして程なく私達は車中の者となった。さあ~明日は…!そうこの娘!!良い加減にしろよ!心で叫びつつ私は明日からサヤに教育を施す手順を既に考え出していた。しかし両手の痺れは取れない。…嘆くまい!。
(続く。)
ルチアーナ作