最近整備されてきた「空き家バンク」。

 

アホみたいに増える地域の「空き家」利活用を目的に、自治体が運営している。

 

私のまちにもある。

 

開設されて3、4年経ち、登録件数は少しずつ増えている。

 

しかし、開設当初から登録されているが、全く売れていない物件も多い。

 

私は、やり方を考えればこのまちの空き家は「ある程度は」活用できると思っている。

 

大都市部には、移住希望者のほか、セカンドハウス、多拠点居住など、新たなライススタイルを志向する人たちが増えているからだ。

 

そういう人たちが暮らす集落にも行ったことがある。

 

だが、残念ながら、わがまちの空き家は「売れない」のだ。

 

なぜか?

 

はっきり言えば、「売るのも買うのも面倒」だからだ。

 

 

 

自分なりにこれまで、地域の人たちと接してきたなかで知ったことを紹介する。

 

これを読めば、「空き家」が買い手、売り手ともにいかに面倒か、お分かり頂けると思う。

 

これは私のまち独自のものかもしれないし、そうでないかもしれない。地方の現場の一例として読んで頂き、ぜひコメントも頂きたいと思う。

 

 

1、謎の価格設定と商慣行

 

空き家バンクを見ていると、明らかに割高なものが多い。

(この家が500万?とか、地元民では信じられない価格で出ている。)

 

こういう話がある。

まちにあった空き家が、500万で売り出されていた。

 

しかし、売り出してから10年間、全く買い手がつかなかった。

 

ある日、近所の人が購入したいと言ってきた。

 

最終的な価格は、なんと250万。

 

半額である。

 

「雨漏りを直さないといけない」、「水回りを直さないといけない」「老朽化した納屋を解体しないといけない」などと、仲介している不動産屋と交渉し、「250万でないと買わない」と値切ったそうだ。

 

所有者も最終的にこれで折れて、半額で売却となった。

 

この話を聞いてビックリしたが、このまちでずっと暮らす父に話すと、「家を買う時は、値切る。この値段でないと買えないと言うもんだ」と何食わぬ顔で話した。

 

どうやら、このまちの不動産業界には「値切り文化」があり、しかも購入者と所有者の関係(親戚とか、長年の知人とか)によっても大きく価格が変わるのである。

 

不動産業者も、値切られるのを見越して価格を提示していたとしか思えない。

 

都会で賃貸アパートやマンションを購入するのとは、商慣行が全く異なるようだ。

 

これでは都会からの移住希望者はなかなか手が出せないだろう。

 

 

2、「騙された?」移住者

 

もう1つは、こういうケースがある。

 

都会から、移住希望者が空き家を探しに来た。ネットで探したところ、ちょうど私のまちの空き家バンクが目に留まり、地元の不動産屋に相談した。

 

紹介された空き家は600万円。

 

たしかに広い家ではあっが、地元民からすると呆気に取られる値段。ド田舎の、夜になれば真っ暗になる場所で、その希望者は「夜、星がきれい」とか言ってその値段通りで購入した。

 

都会の物件に比べれば「安い」けど・・・

 

 

 

 

この話には続きがある。購入後、いざ引っ越そうとしてよく見てみると、水回りはめちゃくちゃ、トイレもメチャクチャ。自分でネットで探した遠方の業者に直してもらった。直接その人から聞いたわけではないが、その修繕に400万円以上かかったようだ。

 

地元業者に頼めば半額くらいで済んだそうだ。

 

合わせて1000万円超。

 

不動産から修繕まで、ネット感覚で解決しようとした移住者にも問題はあると思うが、地元の人に頼れる人がいればこんなことにはならなかっただろう。

 

ちなみにこの移住者は、2年ほどして出て行ってしまった。家が広すぎて持て余してしまったという・・・

 

 

3、不動産業者によって、空き家運用が大きく違う

小さいまちだが、不動産屋は複数ある。しかし全て社員1~2名(つまり社長と奥さんだけ)のような小規模業者ばかり。

そのためか、業者によって空き家の取り扱い方が違う、というか、社長の考えやビジネス手法が大きく異なる。

 

ある業者は、「即入居可」にこだわるスタイル。

 

この業者に空き家仲介を依頼した人。契約が結ばれると、まず部屋の片づけ、清掃、家財道具の処分をさせ(所有者持ち)、さらに水回りの修繕(これも所有者持ち)させた。このほうが入居しやすいから、との説明で、所有者も最初は従った。なんだかんだで300万ほどかかった。

 

しかし、その後も雨漏りの修繕、瓦の修繕等々、業者側から言われたため、恐ろしくなって仲介契約を打ち切ってしまった。

 

契約打ち切り後、所有者の知人が購入を希望し、最終的に500万円で売却したそうだ。

 

こう見れば、200万円儲かったかと思えてしまうが、実はこの家、件の業者に依頼する15年ほど前から空き家で、それまで所有者がずっと家の修繕をし続けてきたという。それを考えると、明らかに赤字である。

 

ちなみに私はこの不動産業者を知っているが、人を騙すような人物ではない。どちらかというと几帳面で真面目なタイプだ。単なる仲介料欲しさに修繕を依頼していたわけではないとは思うが、所有者とのコミュニケーション不足だったのではないかと感じる。

 

 

4、所有者は「売却したい」、移住者は「借りたい」のミスマッチ

田舎の空き家物件で、賃貸というのは非常に少ない。(あったとしても、けっこう家賃が高く、それならアパートかマンションのほうが・・・となる)

しかし、都会からの移住者で圧倒的に多い需要は「賃貸」だ。

 

初めて住む地域で、いきなり購入というのはハードルが高い。

 

ところが、所有者の大半は売却希望だ。賃貸は基本嫌がる。

 

これには、いろいろな事情が絡んでいる。

 

1つに、空き家所有者の多くが、遠方に住んでいるか、施設に入居(つまり高齢者)しているか、近在の兄弟親戚(これも高齢者)だからだ。

つまり、賃貸にした場合の管理が難しいのである。火事が起こった、窓ガラスが割れた、雨漏りがする・・・等々、どう管理するのか?管理業者に頼む方法もあるかもしれないが、残念ながら私のまちではほとんど聞かないし、万一の修繕は所有者負担になるだろう。手続きも面倒になるし、そんなことするくらいなら「放置」しとくほうがマシとなるわけだ。

 

次に、相続の問題がある。空き家によっては、居住者が死亡し、空き家の売却益を相続対象者で割る約束をしている場合がある。こうした約束をしている物件を、賃貸に切り替えるのは正直難しい。

 

さらに、(これは私も調べて知ったことだが、)賃貸にすると相続控除の対象外になってしまうという問題もあるようだ。

「不動産売却の教科書」空き家バンクとは?低い認知度や登録が進まない背景・注意点

 

 

そして、最大の問題は所有者の不動産知識のなさだ。特に「1、2」にもあるように、不動産というのは、複雑な関係が絡んでいる(ような慣行がある)し、信頼できる相談者もいない。(基本、不動産屋は、よほどの知人でない限り信用されていない)仮に賃貸にしてしまえば、よく分からない不動産の世界にずっと付きまとわれると思ってしまうのだ。そんなことするなら、「とっとと売っ払ってしまえばいい」と思ってしまう。

 

5、「そのうち国がなんとかしてくれる」幻想

特に団塊以上の高齢者がよく言っているフレーズ。

国が空き家を買い取ってくれるらしい。(災害時の道路拡幅とか、その他理由にして)

はっきり言おう、そんなことは絶対にない。(田舎の土地を国が買い取って、一体何をしようと言うのか・・・)

もはや高齢者の戯言にしか聞こえないが、知識のない人は本当にそう思っている(というかそれしか考えつくものがない)のである。

 

 

 

以上、5つの話をさせて頂いたが、これらは田舎に住んでいて、私の身近で起こった出来事だ。

 

正直、自分も「空き家って面倒だ。放置か、いっそ損しても取り壊すほうがマシかも」と思ってしまう。

 

結局のところ、空き家に対する不動産知識が、売り手、買い手ともに足りないところが、空き家問題を深刻にしていると言っていいだろう。

 

地域によっては、空き家問題の解決が進んでいるところもあり、こうした地域からノウハウを学んでくることも重要だが、致命的なのは、空き家の件数である。小手先の対策では全く追いつかない。

 

畢竟、地方の空き家問題は解決しないだろう。

 

朽ち果てた空き家が街じゅうに広がり、ゴーストタウン化する。

 

「所有者不明地」が激増し、もし新たな開発をしようにも、足枷になってできなくなるだろう。