ベトナム、シンガポール、日本合作。映画館で見た。お伽話のような映画の世界て語られる愛にどっぷり浸れる作品。


トランスジェンダーのダンサーSanは恋人でボクサーのNamと暮らしている。Sanの性転換手術費用を稼ぐため彼らは必死に働くが、そのうちSanはパトロンの所に通い詰め、Namは闇の地下格闘技に参戦するようになる。そして彼らはすれ違っていく。

1998年のベトナムが舞台だが、あまり時代背景やベトナムの文化は語られずそこが残念だった。最初はSanが働くナイトクラブや同棲する部屋、中盤くらいから市場や食べ物、海のシーンが出てきて東南アジアの蒸し暑くて雑多な空気が感じられた。この感じ、好きだ。
セックス、ヌードシーンは多いがどれも現実感はない。不思議な感じ。
主要な登場人物は主役2人にパトロン、Sanの祖母とSanの子どもを妊娠したセックスワーカーMi Miの計5人くらいしかいない。
現実と幻想が短時間に入れ替わりながらストーリーが進むため、どこか現実味がなくファンタジー……お伽話のよう。でもそれが独特の世界観を作り出しており、特にスクリーンだと世界観に入り込めた。
ラストもお伽話のようにアッサリ終わる。みんながハッピーなエンドではないのでこの終わりかたで良かった。そうでないと辛すぎる。

San役のTrần Quân 、Nam役のVõ Điền Gia Huy二人とも演技がとても良かった。後者は見たことあるなと思ったら「こんなにも君が好きなのに-goodbye mother-」に出てた。不器用で真面目で愛に真っ直ぐな男の演技が上手かった。
そしてTrần Quân 、実際にトランスジェンダーでこれが始めての映画出演だそう。ヌードもセックスシーンもあるが、そんなことより彼女の目がとても印象的だった。感情が動いても目は動かない。何もかも俯瞰、達観しているような感じ。中国大陸の女優にも感じるこの印象。パトロン役の井上肇さんは目に感情が出る演技だったので不思議だった。

映画の世界にハマって見ている間頭を空っぽにできた。これってスクリーンならではの楽しみかただな、と再確認できた作品だった。
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