生きている日本語 | 栗田学武の3C日記

栗田学武の3C日記

俳優 栗田学武の日記

photo:01



ちょっと「日本語」についての
本を読んで、色々と考えたりしたので、
書きます。





ただ、頭の中を整理するだけに書くので、
めちゃめちゃなこと書くかもしれません。
そして、ダラダラと書くので、
時間がある時、お昼休みとかに
暇だったら読んでください。。。






日本語について考える上で、
役者として考えるべきは標準語・共通語ですね。





ただし、標準語と共通語とは、
実は別物です。



↓以下Wikiより↓
共通語が「その地域内で意思疎通を行うための便宜的な言葉」であるのに対して、標準語とは「人為的に整備された規範的な言葉」を指す。また、標準語とは「こう話す/書くべきである」という規範であり、共通語は、標準語を念頭におきつつ、「実際こう話して/書いている」という実状の言語であるという考え方もある。





そして、この標準語っていうのは、
明治初期から昭和初期にかけて、
言文一致運動と共に定められていったもので、
東京の教養層が使う、「山の手言葉」が元になってるそうです。






ただ、何が標準語なのか?
の基準が曖昧な中、標準語らしきものを作り上げていき、
それをNHKがバンバン使って全国に広めていった。





つまり、僕らが知っている「標準語」とは、
東京の山の手言葉を元にはしているけど、
「実生活では誰も使っていない」新しい日本語なんです。





因みに余談ですが、
標準語を作る上で、3つの方法が考えられたという話があります。


(1)古語を標準にする方法。つまり、方言は全部捨てて、平安時代の言葉に戻す。


(2)全国の方言を調べ上げて、一番多い単語を選んでいく方法。


(3)日本の中心地で使われている方言を使う方法。最有力候補は東京の山の手言葉と、京都言葉。




結局、(1)と(2)は現実的ではなかったので、
(3)の方法がとられ、金と権力の集まる山の手言葉になったらしいです。






で、話は戻りまして、
日本語と俳優の話をします。




実は誰も生活で使っていない「標準語」。
それが正しい口語だと思い、
「標準語」をベースに
セリフを吐いている役者が多いんですね。





特に僕みたいに東京圏外から来た人に。
だって、NHKで喋ってる言葉が
正しい日本語の発音だと思ってるもん…。





ただ、東京の人でも、
わざわざ「標準語」に変換して
演じている人も多いですけどね。






やっぱり、普段誰も喋らない言葉で、
喋り言葉を発しても、
全く面白くないんですよね。
「セリフっぽく」なっちゃうし、
喋らされているというか、
言葉が浮いちゃう。






自分の言葉じゃなくなるんですよね。





例えば、西田敏行さんの言葉って素敵だなって思うんですよね。





あの人の口から出るセリフって、
決して「標準語」じゃなくて、
「東京弁」って感じがするんですよね。





すごい生っぽいというか、
日本語が「生きている」。





こういう、「生きている」「生っぽい」日本語じゃないと、
どんなに良いセリフでも、
見ている人の心に届かないと思うんですよね。







たまに「この役者の演技って、自分そのままじゃん」って言われる役者さんっていますよね。
普段のその人と、演技をしているその人とにあまり差がない人。






この評価ってあまり良くない風に使われたりするんですけど、
僕はすごいことだなって思うんです。






何故かというと、
自分じゃない誰かが書いた「セリフ」を
あたかも、本当の自分が喋っている「言葉」と思わせているから。





ほとんどの人が
台本を見る→標準語の音にして話す
のところを
台本を見る→自分の言葉として話す
が出来てるんです。





これが実はすごい難しいんですよね。
だから、うまい役者っていうのは、
セリフを自分の中にちゃんと落とし込めてるかどうかが、
とても大事なポイントなんだと思います。







つまり、「生きている日本語」
「生っぽい日本語」とは、
そこに人格だったり、生活だったり、
時代背景が組み込まれていないといけない。
「標準語」とは、全く逆で、
人格、生活、時代背景を
全く排除したものなんだと思います。







前者は、役者だったりが、
人に何かを「訴える」時に有効で、
後者は、アナウンサーだったりが、
人に情報を「伝える」時に有効なんだと思います。






「最近は日本語が乱れている」って
よく言いますが、
それはただ単にNHKが作った
「標準語」じゃなくなってきてるだけ。





ら抜き言葉とか、い抜き言葉とか、
「標準語」ではないけど、
「共通語」だと思うんです。




乱れているというより、
ずっと変化し続けている日本語の
一つの動きなだけだと思うんです。






そして、役者は現代が舞台だったら、
現代で使われている、話されている「日本語」を
駆使しないといけないし、
時代劇なら、その時代の「日本語」を
理解して話さないといけない。






たまに現代の設定で女性が「~だわ。」とか使ってるのを見ると、
ほんと違和感あるんですよね。






現代の女性で「~だわ。」って使う人いないし。
話してる役者も窮屈そうなんですよね。






最後に自分の話にします。





僕は関西出身なんで、普段は関西弁です。





よく、「標準語になおしなさい」って
言われるんですけど、
素直に頷けないんですよね。
そもそも「なおす」って何?
(もちろん、訛った言葉しか喋れなかったら役者としてダメなんですけどね)






「共通語」もしくは「東京弁」の発音を
覚えなさい。だったら素直に頷きます。
だいぶ、ひねくれてますが。





だから今、東京弁を話せるように
特訓中です。
家で東京弁を話すラジオを流しながら、
一人で勝手に会話してみたり、
復唱したり。(笑)







とまぁ、取り止めもなく書きましたが、
生きている日本語を
話せる役者になれるように頑張ります。






そして、そんな役者が増えたら、
きっと日本の映画、舞台が、
もっと面白くなると思います。