きよしさんは「大井追っかけ音次郎」を歌い終えるとセンター階段の中段に立ち、客席を見据えたのです。
紋を染め抜いた白地の着物に黒袴。そこにはあまりにも凛々しいひとりの男性が立っていました。
そして、意図的に顔に照明をあてていないので、そのお顔は白くぼんやりとしていたのです。
すうっ。
きよしさんは息を深く吸い、
きよしさんは息を深く吸い、
「♪地所(ところ)変われば~~~ 水~変わる~~~」
と、浪曲をうなり出されたのです。
コンサートで「浪曲一代」を歌われる時、きよしさんの歌う浪曲を流してくださるようになりましたが、生浪曲を聴かせていただくのは初めてでした。
一瞬総毛立ち、すぐにその美しく心地よい響きに感動して、感激して、目をつむって泣きたくなってしまいました。
自分が今どこにいるかもわからなくなって、からだの力が抜けるような、しびれるような感動でした。
夢を見ているのかしら?
そう思いました。
そして、きよしさんの見えないお顔がいろいろな表情に見えてきて、私には長良会長のお顔が重なって見えるような気がしたのです。
私、どうして、こんなに素晴らしい歌手である氷川きよしさんに出会えたのかしら?
ああ、ほんとうにそれは奇跡!
そんな思いでいっぱいになったのでした。
12月11日、東京国際フォーラム ホールAで行われた「きよしこの夜Vol.12」、夜の部に参加しました。
以下、コンサートの内容にふれるものになります。
開演前、緞帳にはきよしさんの画像が2点。そして舞台の上手、下手前方に氷のオブジェが飾られていました。
幕が開くと氷の妖精を想起させる真っ白な衣装のダンサーの方が舞い、客席のセンターブロックの両通路を長いベールを掲げるようにしてダンサーの方が現れ舞台に上がります。
舞台両サイドの氷柱のオブジェは照明になっていて、ブルー、パープル、オレンジ、ゴールド等など様々な色に変わるのでした。。
スモークが焚かれ、舞台後方スクリーンに大きく美しい月が映し出されます。
”櫻”の木があり、そこに一糸まとわぬ素肌のきよしさんが現われます。
きよしさんは”櫻”の化身なのでしょうか。
”櫻”の花びらがひとひら舞い落ちてきて...。
”櫻”の花びらがひとひら舞い落ちてきて...。
きよしさんの姿は、その花びらに触れるとしゃらしゃらしゃらと光のかけらのようになって霧散するのです。
この時、胡弓の音が響いているのでオープニングはもしかしたら?
と思っていたら、やはり
「雪月花」でした。
何て幻想的なのでしょう。きよしさんは氷を身にまとっていたのです。
オフホワイトにラメが入り、シルバーにも見えるロング丈のコートにパンツ。タイやジャケットの裾や袖口には氷を模した美しい装飾が施されています。
後半、着流し姿のきよしさんに司会の西寄さんが、”着流し姿だと言葉使いまではんなりしてきますね”とおっしゃったのですが、その言葉を聞いた瞬間、「雪月花」のきよしさんの歌唱こそ、まさに”はんなり”としているなあと感じたのでした。
そして上着を脱がれシャツ&パンツスタイルになって
「櫻」
「出発」と歌ってくださいました。
私は「櫻」がオープニング2曲目ということに満足して聴き入っておりました。
今、とてもとても「櫻」が聴きたかったのです。
皆さま、今回はマイクカバーにも注目です。
このオープニングでは、ジャケットととも布のオフホワイトの布地で作られたものを使用されていました。
そして着流し姿で登場されたきよしさん、着物は少々青味がかった薄鼠に墨絵で松の木が描かれています。
帯は濃紺の角帯、半襟も同色でしょうか。
紫の番傘をさしての登場です。
西寄さんの口上があり、
「三味線旅がらす」
「関東春雨傘」
「おやじの海」と歌われました。
「関東春雨傘」を歌う、きよしさんのいなせな歌唱は艶めいて色っぽくて、その魅力が勢いよくはじけるようで。
番傘を閉じて振りまわす仕草も粋でキマッていたのです。
番傘を閉じて振りまわす仕草も粋でキマッていたのです。
ここでオープニングトークでした。
客席の声に耳を傾けながら、
「なにも話さずともわかる。私にはわかる」
なんて、うんうんと頷きながらちょっぴり神妙におっしゃって(笑)、
客席と視線と言葉を交わしながらセンターに戻られると、
「今夜はキラキラとした宝物のような時間にしていただきたいです」
とおっしゃったのです。
なかにし礼先生は「日本作詩大賞」の授賞式の時に、”長良会長にいただいた命です”ときよしさんにおっしゃったそうです。なかにし先生ががんを発病された時、長良会長が治療に関する資料を集めて送ってくださったということでした。
きよしさんは自分のような若輩者にそのようなことを言ってくださったなかにし先生の素晴らしい人柄に感激されたのだそうです。
そしてサプライズ・プレゼントということで、松井由利夫先生が詩を書いてくださった曲で5~6年前からあたためていたという
「きよしのニッポン音頭」を披露してくださいました。
きよしさんのおっしゃるように「ハロウィン音頭」といい、音頭は日本人のDNAに響くものがあるのでしょうね、聴いているとうずうずしてきて来年の盆踊りシーズンに踊ってみたくなりました。
きよしさんのおっしゃるように「ハロウィン音頭」といい、音頭は日本人のDNAに響くものがあるのでしょうね、聴いているとうずうずしてきて来年の盆踊りシーズンに踊ってみたくなりました。
いつかは「きよしの五輪音頭」が聴きたいと思ってしまった欲張りな私でした。
ここで衣装チェンジ。舞台は暗転します。
再び登場されたきよしさんは、鮮やかなパープルのベルベットのジャケットに蝶タイもとも布。襟は格子柄の地紋の付いた黒地でラメが入っています。ブラウス、パンツ、カーフベルトは黒のサテンでした。
ちなみに着流しの時はマイクカバーはありませんでしたが、ここでは黒のスワロフスキーをびっしりと埋め込んだようなカバーでした。
「最後と決めた女だから」
「哀傷歌」
「残雪の町」
「あなたのブルース」
と熱唱が続きました。
「哀傷歌」ではアルバムの特典PVの映像が流れるのですが、生身のきよしさんが映像のきよしさんとシンクロし増幅して、不思議な感動を体験しました。
暗転すると、コーラスの方が「ホワイトクリスマス」を歌い始めます。
ここで、"HK BOOK"がスクリーンに映し出されました。
そうです。昨年の”きよし人形”の物語の続きがアニメで展開されたのでした。
家族の一員として愛された”きよし人形”は奇跡を起こすのです。
そんな奇跡の延長のように、サンタクロース姿のきよしさんが登場します。赤い帽子をかぶって、黒のロングブーツを着用。
ここで「きよしのMerry X’mas」
を歌ってくださいました。
そして早変わり。
サンタクロースの真っ赤なローブを脱ぎ去ると、きよしさんの記事が書かれた英字新聞をプリントしゴールド加工した生地で作られた燕尾服姿に。
蝶タイもとも布で、ブラウスは白、前たてだけ新聞柄の記事、ベストは黒。左の腰に黒いレースのショールを垂らしています。
この燕尾服スーツ、なんとも素敵です。
「きよしこの夜」
「キヨシこの夜 ~Angel of mine~」
と歌い、途中で階段のステップに腰をおろして歌われると、ミラーボールが降りてきて回り出しました。
切ない恋ごころ、足跡もつかない真っ白な雪。
冷たく透き通った空気をそのまま閉じ込めたようなきよしさんの歌唱に聴き惚れていました。
きよしさんはどうして初めて歌った時から、これだけ年月を重ねても尚新鮮でいられるのでしょう。
きよしさんは階段上段の雪をかぶった煙突に姿を消します。
と思ったら、お顔が現われて、また手を振って。
舞台は暗転しました。
ここで陽春のインストロメンタル演奏になり、西寄さんがお話しされました。
「自分ひとりのために歌っていた歌が、今では多くの方の人生に寄り添い、幸せを紡いでいらっしゃいます。
初めて氷川さんに会った2001年7月 のチャレンジステージのことを思い出します。
多忙なスケジュールの中でも、きよしさんは謙虚で感謝を忘れない方でしたが、それは今も変わりません。
大きな賞を受賞されても、歌謡界に大きな金字塔を打ち立てても、
いつも、”ファンの皆さんもおめでとうございます。”とおっしゃいます。
それが氷川きよしです。
ピュアで優しくてあたたかくて、いつも新鮮。そしてその誇れる歌唱力。
来年はデビュー14年目。ということは節目となる15周年への大切なステップになる年です。
氷川きよしにあたたかなご支援とご声援をよろしくお願い申し上げます」
言葉に込められた西寄さんの言葉以上に熱い思いに感動せずにはいられず涙があふれてきました。
きよしさんはここで、この記事の冒頭に書きましたが紋を染め抜いた白地の着物に黒袴で登場されました。髪もきっちり左右に分けて凛々しさの中に雄々しさが漂っていたのです。
「一剣」
「箱根八里の半次郎」
「大井追っかけ音次郎」
「浪曲一代」
「白雲の城」
と怒涛の熱唱でした。
「浪曲一代」では生浪曲を初披露され、その感動さめやらぬうちに、「白雲の城」で杜甫の「春望」を吟じ、詩吟も初披露してくださったのです。
「白雲の城」のインストロメンタル演奏が入り、
舞台後方スクリーンに都会の夜景が映し出されると、細かなスパンコールが散りばめられた鮮やかなロイヤルブルーのスーツに身を包んだきよしさんが登場。
シャツは大きなフリルのついた黄色のサテン地。ジャケットの襟やボタンはシルバーラメで左胸には赤いバラ。蝶タイとマイクカバーはスーツととも布でした。
スクリーンの映像でカメラマンに囲まれてフラッシュを浴びるきよしさん。「虹色のバイヨン」のPVが流れます。そのPVから抜け出てきたかのようにカメラマンの扮装のダンサーの方たちがきよしさんを取り囲みカメラを向けるのです。シャッター音がこだまして...。
歌ってくださったのは、
「虹色のバイヨン」でした。
そしてスーツととも布で、シルバーのテープが飾られたシルクハットをかぶり、
「ときめきのルンバ」
「情熱のマリアッチ」
めくるめく甘く切ない情熱の歌唱でエンディングとなりました。
鳴り響く拍手と歓声に包まれた”氷川きよし”のなんとまぶしかったことでしょう。
きよしコールが起こり、幕が開くと舞台の上にはゴールドにHKのロゴが黒で描かれた2つのスクリーン。
ダンサーの方たちがそのスクリーンを移動させて2つが重なってひとつになり、再び離れて2つになると、その間からきよしさんが登場されれました。
「ベルサイユのばら」のオスカルを思わせる赤いスパンコールのミリタリージャケット。
ゴージャスな金糸の刺繍や肩飾りが印象的で右肩のゴールドのフリンジのアクセントがきいています。袖口は黒地でゴールドのボーダーが3段入っています。パンツは細身の黒でサイドも縫い取りが施され、手袋までゴールドラメでした。
アンコールは
「きよしのMerry X’mas」
でスタートでした。
”皆さん、一緒に歌いましょう”
きよしさんはそう客席に呼びかけて、歌詩のひとことひとことに、感動と感謝の思いを乗せ客席中に届かせるように時には語り、右手を大きく遠くへと差し出されながら歌われたのです。
スクリーンにはサンタ姿のきよしさんが街を歩く映像が流れ、最高にハッピーな気持ちにさせられます。
途中、少し涙ぐまれ、涙声になられましたが、もちろん、これ以上ない最高の笑顔のきよしさんでした。
そして続いての
「きよしのソーラン節」
では、太鼓のリズムに合わせて、「ソーラン節」を歌ってくださったのです。
お別れの曲、そして明日への始まりの曲は、
「きよしのズンドコ節」
でした。
25曲8変化。
夢のよう? いえもうこれは夢以上です。
きよしさんのおかげで忘れられない素晴らしい時間を過ごさせていただきました。
でも、きよしさんはその歩みを止めるこなく、さらなる地平を目指して荒野を歩まれているのですね。
この日も、”皆さんの歌に出逢いたい”と切実な思いを言葉にされていました。
「きよしのズンドコ節」から10年。
きよしさんは、悲しい出来事が日々起こるこの世の中に、愛や幸せを届けるために、歌手として常に旬であり、今現在の思いを歌に乗せて多くの方の心に届けたいと切望されているのでしょう。
多くの歌たちに愛されているに違いない、われらが氷川きよし。
その行く手に、いずれ生まれ来る綺羅星のような歌たちが、”あなたに歌ってほしい”と現れることでしょう。
きよしさん、最高のステージをありがとう。
あなたのファンになれた私は世界一の幸せ者です。