「NHK歌謡コンサート」ご覧になりましたか?
きよしさんが歌ってくださった「男はつらいよ」、素晴らしかったですね。
格子柄のスタイリッシュなスーツも素敵で、NHKホールに観覧に行っていたのですが、きよしさんの台詞に新鮮さを感じ、きよしさんが歌うほどにその歌唱に惹き込まれていったのです。
とりわけこの「男はつらいよ」のクライマックスと思われる
「♪男というもの つらいもの
顔で笑って 顔で笑って
腹で泣く 腹で泣く」
腹で泣く 腹で泣く」
と歌うきよしさんの歌唱に、自分の心もシンクロしたかのようにふるえるのを感じたのです。
人生の悲哀も、喜びも、そして輝きも、そのすべてがその歌唱からあふれてきて、NHKホールいっぱいに広がっていくようでした。
きよしさんが結びの台詞をおっしゃっている姿を見ていたら愛しさと切なさで胸がもういっぱいになって、
”ああ、今日はあなたの歌を、そしてあなたを抱きしめてもいいですか?”
と気がついたら心の中で呼びかけていたのです。
この回のテーマは、「あぁ!憧れの銀幕歌謡」でしたが、夕焼け色に彩られた舞台でひとりたたずんで歌っているかのようなきよしさんの声に重なって寅さんの声が聞こえてくるようでした。
寅さんはじめ「男はつらいよ」の登場人物たちが、映画を見ているかのように私の頭の中に浮かんできて、きよしさんの巧みな表現力と、醸し出す空気感が、私に”映画”を感じさせてくれたのです。
帰宅してまた録画を見ていましたが、ホールで感じたあの感動のすべてがギュッと詰まっているようで、再び胸がいっぱいになってぼうっとしてしまったのでした。
終演後の歌のプレゼントコーナーは、あさみちゆきさん、森山愛子さん、そしてきよしさんでした。
小田切アナウンサーに呼んでいただいて登場したきよしさんは、「櫻」の”櫻”色バージョンの衣装をお召しになっていたのです。
ということは「櫻」を歌ってくださるのかしら?
私は少しドキドキしたのですが、きよしさんは開口一番、
「皆さん、今日はありがとうございました」
と「男はつらいよ」を歌う際の応援へのお礼をおっしゃったのです。
そして、
「緊張しちゃって...」
と率直な気持ちを言葉にされたのでした。
「『男はつらいよ』をずっともう24時間聴いて。家で聴きまくっていましたよ(笑)。
渥美さんのお歌は温かいんです。言葉のひとつひとつが温(あった)かいんですよね。
だからそれをどうやったらお伝えできるのか、悩みましたー。
とても緊張していたのですが、皆さんの応援のおかげで緊張が消えて落ち着いて歌えました。ありがとうございます」
そんなふうに苦心されたことをお話しされたのです。
小田切アナウンサーが6月13日に発売される「演歌名曲コレクション16 ~櫻~」について紹介してくださると、
「僕のライフワークになっています。聴いていただいて?」
と突然問いかける口調となったかと思ったら、客席の照明が点いたのです。
場内のやりとりに即座に機転をきかせてくださった係りの方に感激してしまいましたが、おかげできよしさんが明るくなった場内を見渡して、
”3階席の皆さーん、ありがとうございます”、”2階席の皆さんも、ありがとうございます”、"目と目を合わせて(笑)”
とまんべんなくご挨拶をしてくださったのです(喜)。
そして再びアルバムの話題になり、
「アルバムは自分の思っていることを表現できる場だと思っています。皆さんに、こういうふうに生きていけばいいんだよ、大丈夫なんだよということを伝えることができる、僕にとっての表現の場ですね」
と。さらに、
「裸の僕を」
と言いかけてから、言い直して
「裸の僕の心を聴いていただきたいです」
とおっしゃたのでした。
昔は録音することを"吹き込む”と言っていたようですが、きよしさんのお話を聞いていて、その言葉が浮かんでなるほど本質をいい得ている言葉だなあと思ったのです。その言葉を用いれば、きよしさんはCD1枚1枚にまさに声のみならず、”裸の心”までもを吹き込んでくださっているということなのですね。
トークがはずんだ後で歌ってくださったのは、衣装から予想したとおり「櫻」でした。
このコーナーではどんな選曲をされても良いはずで制約はないのだと思いますが、そこであえて「櫻」を歌うことにされたことに、私はきよしさんの大いなる決意を感じていました。
いつになく遠くを見つめていらっしゃるようにも思えたのですが、その歌声もまなざしも澄みきっていて美しかった
のです。
そして、
”みんな、心配かけちゃったよね。ごめんね。
でも心配してくれてありがとう。
一緒に泣いてくれてありがとう”
きよしさんがそんなふうにおっしゃってくださっているかのように感じたのです。
大切な「櫻」が多くの方の心に届くことを、一緒に願ったに違いない長良会長のお心に応えるためにも、「櫻」をさらに心をこめて歌って行こうと心に決められたのではないでしょうか。
いつも真心を込めて歌ってくださるきよしさんの歌声に、その真実があるのだと思ってきました。
だからこそ「男はつらいよ」の私たちを優しく温かく包み込むような歌声は、きよしさんの心そのもの。
自分はつらくても苦しくても、泣き言のひとつも言わず人を勇気付け笑顔にさせ、幸せにしてくださる、きよしさんの大いなる愛を感じて、また胸熱くなるのです。
最後は小田切アナウンサーとお二人で客席のあちらこちらに向かって大きく大きく手をふってくださり、客席の照明が点き、緞帳が3分の2ほど降りたところで舞台の照明は落ちたのですが、暗くなってもまだ一生懸命に手をふってくださっていました。
※放送終了後、三原綱木さんが小林旭さんのことを絶賛しておられました。
”小林さんが歌うと、小林さんの色でいっぱいになるのを感じました。70代(73歳)になって、あの歌声、素晴らしいです”
そのようなことをおっしゃったかと思います。
歌い手さんの色があふれ出して、場内を満たしていくという三原さんのイメージを私なりにも想像してうっとりしたのでした。
歌のプレゼントコーナーでは、あさみちゆきさんが登場。
「井の頭線」を歌ってくださいました。井の頭公演でのストリートライブは現在164回。5月19日に第165回を開催する予定だそうです。
この日の放送で歌われた「新橋二丁目七番地」は、実在の住所。きよしさんが「あの娘と野菊と渡し舟」の発売記念イベントを行った新橋のSL広場の住所で、歌のモデルになったのは新橋駅前で40年以上路上靴磨きを行う中村幸子さん(80歳)。
あさみさんも靴を磨いていただき、その時に
「私の名前は幸子でしょ。だから人が幸せになるのを見るのが私の幸せなの」
とおっしゃったそうです。
中村さんを思い浮かべて語ったあさみさんの言葉に小田切アナウンサーがじんときてしまったようで、一瞬言葉が詰まった様子でした。エピソードもさることながらそんな小田切アナウンサーの様子にも感動してしまいました。
続いて森山愛子さんが登場され、6月20日リリースされる新曲「約束」のカップリング曲「イムジン河」を披露してくださいました。放送で競演したダンサーのお一人が高校の同級生だったそうで、そのことをとても喜んでいらっしゃったのです。
縁て不思議で素敵なものですね。