さて渋谷C.C.Lemonホールでのコンサート1日目夜の部のご報告の続きです。
少し前後しますが、ニューアルバムからオリジナル曲は「さすらい港町」と「妹へ」の2曲を歌ってくださるのですが、それぞれの歌の背景を事細かにそして、楽しく説明されて、「さすらい港町」では信じていた恋人に浮気をされてしまった主人公の胸中を熱く語られたのですが、西寄さんがきよしさんが”裏切られる”ことを”アレされる”と言うのを受けて、「人にされて一番イヤなことはアレされることですよね!」と言ったので、きよしさん、よほどおかしかったらしく、「さすらい港町」を歌う時に、イントロが流れている時は後ろ向きで、歌い出す時に憂いを秘めて振り返るのですが、この日は振り返った時には何とまだ笑いがとまっていなかったのです。
ええっ? あんなに笑っていてきよしさん大丈夫だとは思うけど、でも本当にやっぱり大丈夫なの? なんていらぬ心配を凡人ゆえにしてドキドキしてしまった私でしたが、さすがにきよしさん、そんなに笑っていたのに、さあ、いざ歌いますというその瞬間、サッとシリアスな表情に変わり、切ない愛を歌い出したのでした。 プロとはいえ、きよしさんの集中力には脱帽してしまいました。
カバー曲の「踊子」、「喜びも悲しみも幾歳月」。共にきよしさんがドラマティックに歌い上げます。
「踊子」は「伊豆の踊り子」を題材に学生さんの視点から描かれているのですね。そして「喜びも悲しみも幾歳月」は同名の映画の主題歌ですが、照明がまるで灯台の灯りのように動き、歌っているきよしさんの姿が嵐に向かって両腕を広げて大切なものを守ろうとする雄々しき灯台守に見えてくるのです。文学や映画で表現された世界をきよしさんは歌で表現することができるのです。感嘆のため息が出てしまう私でした。
そして後半、オリジナル曲を「番場の忠太郎」まで、熱唱に次ぐ熱唱となりました。
きよしさんは「番場の忠太郎」を歌い終えると、感謝の言葉をおっしゃった後、心中を切々と語り始めたのでした。「浮き沈みの激しい芸能界で、どちらかというと引っ込み思案だった自分が右も左もわからない中、何とかやってこられたのは、応援してくださる皆さんがいてくださったからです。
コンサートツアーも9年目に入りましたけれども、初めての時は自分なんかがコンサートをやらせていただくなんておこがましいと思っていましたし、最初の1年でその後はないんじゃないかと思っていました。
今日までずっと、”おこがましい”と言いながら、ずっとやらせていただいてきてしまいました」
そして、満場の客席からの熱烈な声援に感動して少し身震いしながら
「皆さんの声援に歌でお返しししたいという思いがわいてきます。そういう気持ちにしていただけてありがたいです」
そうおっしゃいました。
この日の”教えてきよし君!”で、七夕の短冊にどんな願い事を書くかという質問があり、きよしさんは
「良い歌に出会いたいです。ヒットするとかそういうことではなくて聴いてくださった方の心に思いが伝わるような歌に出会いたいです」
と答えていらっしゃいましたが、そのことと重なって私の心に深く残ったのでした。
そんなきよしさんに、きよしコールが場内にこだまし、その声は次第にまとまって、そして大きくなっていきました。
きよしさん、なんともいえない幸せそうなお顔をされて、
「ありがとうございます」
「うれしいですね。本当に」
「そんな、なかなか応援なんてしていただけませんよ」
「ありがとうございます」
切れ切れにそうおっしゃっていたのですが、
「皆さんに応援していただけてうれしいです。真心がうれしいです」
そうおっしゃったかと思うと、きよしさん言葉が出なくなり、あふれる涙をとめることができなくなってしまったのです。きよしさん、何かしゃべろうとして、逆に泣きじゃくったようになってしまいました。
そんなきよしさんの様子に私はファーストコンサートツアーでのきよしさんの姿がうかんできました。きよしコールがうれしいといっては感動して泣かれることが何度かありました。そんな時、私はきよしさんのそんな様子に、こんなにまで素直にファンの思いに感動し感謝することができるなんて、何て純粋な人なのだろう? でもこんな方が芸能界でこれからやっていけるのかしら? なんて失礼ながらいらぬお節介で気になって気になって仕方なくなってしまったのでした。
「本当に心がありがたいです。物じゃない、心なんですね。良い方(ファン)と出会えて良かった。(この出会いは)奇跡ですね」
きよしさんは涙をぬぐって笑顔でそう言ってくださいました。
そして居住まいを正して、最後の曲を歌う前に自らが「浪曲一代!」と、声高らかに曲名をコールされたのです。きよしさんの頬にはまだ涙の痕は残っていましたが、晴れやかな笑顔での熱唱となったのです。
この日のきよしさん、ハートを素裸にしてコンサートに臨んでくださったのではないかと感じました。
初心に返るということをずっとおっしゃられてきましたが、生きていく中で身に纏ってきたものを脱ぎ捨てるのはとても勇気のいることであり、相手を信頼できなければできないことだと思うのです。
きよしさんの美しい涙に、ああまた、きよしさん、ひとまわりも二まわりも大きく成長されたのだなあと感慨ひとしおの私でした。きよしさんがこの日流された美しい涙を私は決して忘れることはないでしょう。
アンコールは昨年の日本有線大賞で着用された青いスパンコールのジャケットにピンクのフリル付きブラウス、ジャケットととも布のロングリボンを胸に結んだ衣装で登場。
「かあさん日和」と「きよしのズンドコ節」を歌ってくださいました。
「氷川きよしは永遠に歌い続けます」
そんなきよしさんの永遠のファンでありたい! と熱い思いがわいてきたのでした。
私はこの日「番場の忠太郎」を聴いて、鎌倉芸術館で感じたことがたまたまではないことを確信していました。
多分これまでよりキーを下げて歌っていらっしゃるのではないかと思うのですが、高音で澱みなく歌っている時と少し違って発声に余裕があり、そしてこれまでに培ってきた歌唱力が作用して歌詞に陰影が生まれてきて含みを感じさせるものになっているように感じられたのです。
私は「番場の忠太郎」を聴いていて、謡曲を聴いたり、お芝居を見ているかのような面白さを味わったのでした。 忠太郎になり切って歌に描かれた世界を表現するきよしさんと、それをもう違う角度から見ているきよしさんも同時に存在しているといったらよいでしょうか。その心地よさ、面白さに、ずっとずっとその歌を、語りを聴いていたい気持ちになったのです。
これまでに何度も聴いてきた大切な大切な曲である「番場の忠太郎」。またこうして新たな感動を味わうことができるなんて、幸せでファン冥利に尽きます。そしてそれでもまだまだきよしさんは進化の途中でしかないのですよね。そんなきよしさんにずっとついていけますように! 心の底からそう願います。
※2日めのご報告や質問コーナーでのトークのご報告は明日以降になりそうですが追っていたします。コメントの返信も遅れてしまってごめんなさい。今しばらくお時間いただくことお許しください。
今日のお昼は高田文夫先生の「ラジオビバリー昼ズ」(ニッポン放送)に生出演。またまた楽しいトークが聞けますね。