「ヘンリー六世」を彩の国さいたま芸術劇場で観てきました。蜷川幸雄さんが芸術監督を務めているこの劇場は埼玉県の与野本町という駅から徒歩7分ほどのところにあって、決して足の便が良いとはいえない場所なのですが、蜷川ファンとして観劇のためはもちろん、舞台稽古中の出演俳優さんの取材に行くことも多々あって、今では随分通い慣れてきて、最初は遠く感じた駅から劇場までの道々も親しみのある楽しいものに思えます。
「ヘンリー六世」はシェイクスピアの最初の戯曲といわれていて、百年戦争、薔薇戦争と半世紀にわたるイギリスの激動と波乱の歴史を描いたもので、オリジナルは3部作で上演時間も9時間に及ぶものですが、シェイクスピアが一躍人気劇作家となるきっかけとなった作品でもあるそうです。
今回の蜷川版「ヘンリー六世」では前後編の二部構成にし、上演時間をほぼ7時間におさめています。主演のヘンリー六世には上川隆也さん、そして大竹しのぶさんはジャンヌ・ダルクとマーガレット王女の二役、サフォーク伯爵を池内博之さん、リチャードを高岡蒼甫さんが演じていて、見応えがありました。ほぼ一日おきに上演し、大阪公演も控えていますが、出演者の演技の応酬に次第に引き込まれていきました。
今回の蜷川版「ヘンリー六世」では前後編の二部構成にし、上演時間をほぼ7時間におさめています。主演のヘンリー六世には上川隆也さん、そして大竹しのぶさんはジャンヌ・ダルクとマーガレット王女の二役、サフォーク伯爵を池内博之さん、リチャードを高岡蒼甫さんが演じていて、見応えがありました。ほぼ一日おきに上演し、大阪公演も控えていますが、出演者の演技の応酬に次第に引き込まれていきました。

ちなみに上演時間です。
13:00 前編開始
〈休憩15分〉
16:50 前編終演予定
〈大休憩 60分〉
17:50 後編開始
〈休憩15分〉
21:30 後編終演予定
〈休憩15分〉
21:30 後編終演予定
となっています。一日のほぼ大半を劇場という空間に身をおいて過ごすというだけでも濃密で贅沢な時間だと思いますが、今回、蜷川さんの演出プランによって、ステージ後方にも座席(ステージ席)を設けています。
私は今回、このステージ席の方で観ることができたのですが、出演者がすぐ横をすり抜けていったり、真横や頭上で俳優さんたちの台詞を聞くことができ、スリリングな気持ちになっていきました。暴動のシーンでは思わず民衆と共に声をあげたくなってしまったほどで臨場感を通り越して、その空間でともに自分も生きていたかのような体験をさせていただいたのです。
尊敬する上川隆也さんの演技は見事という他はなく、前回の「表裏源内蛙合戦」といい、蜷川さんは上川隆也さんには随分難しい演技を要求しているのだなあと感じました。今回のヘンリー六世も時代に翻弄され、その煮え切らなさは時に観ているこちらをイライラさせもするのですが、上川さんは奇もてらいもなくヘンリー六世の生涯を重層的に演じていくことで、やはりこの壮大な歴史ドラマの主役はヘンリー六世なのだと心底納得させられました。7時間という時間が少しも長く感じられませんでした。
シェイクスピア劇初挑戦ということでも話題になった上川さんですが、この難役をこんなにもわかりやすく、けれどもスリリングに演じることができるなんて、お見事です。
ちなみにこのステージ席に行くのは舞台を横切るわけにはいかず、いったん楽屋口に降りていくのですが、これがまたまた楽しい体験でした。本来は純粋に楽屋口である部分をこの舞台上の客席に行くために通路を作って、その部分だけ区切ってあるのです。そのため簡単な衝立しかありませんので、衝立の間から楽屋の廊下が見えますし、お芝居で使用していた旗や槍などの武器なども、立てかけてあるのが間近に見えるのです。
通路は暗幕がはられていて薄暗く、休憩のときにそこを行ったり来たりする度、ドキドキさせられたのでした。
終演後、再びその通路を通って帰るのですが、同じように暗幕の向こう側を、出演者のかたたちがワイワイガヤガヤ楽屋に戻るために歩いているのに気付きました。
そうなんだ、すぐこの暗幕の向こう側が出演者の方たちの通路になっているんだと思ったら、またまた楽しい気分になったのです。するとその時でした。「お疲れ様でしたぁ!」
ひときわ通る声が耳に入ってきました。そうです。その声の主は紛れもない上川隆也さんでした。
カーテンコールの時も、満足げな微笑みをうかべていた上川さんでしたが、その晴れ晴れとした声に、ああ、この舞台に”ノッている”んだなあと感じさせられました。そして観客の一人として濃密な演劇体験をし、暗幕で隔たれていて姿は見えずとも出演者の方々と、ほぼ一緒に舞台から降りて現実へ戻っていくという体験は、その舞台が素晴らしかっただけに、何だか自分も観客として同じ時間を過ごせたのだという充足感を抱いたのでした。
さいたま芸術劇場 大ホール客席

さて、余談ですが、ここで客席の話題です。
私はステージ席からちょうどこんな感じで舞台と客席を見ながら、お芝居を観ていたのですが、舞台から客席って本当によく見えるのだということを再認識しました。
以前、「レ・ミゼラブル」の取材のときに帝国劇場の舞台の上で囲み取材があって、思わず舞台中央に立って客席側(その時は誰もすわっていない状態でした)を眺めてみて、客席に座って舞台を観ているより、舞台から客席がずっと近くに感じることに驚いたことがありましたが、今回は実際にびっしりお客さんがすわっている状態でしたので、はっきりお顔が見えるということに驚きました。
会場にもよるかもしれませんが10列目くらいまでははっきり見えましたので、8列目に座っていた知り合いを見つけることができました。強いスポットライトを浴びている時は何も見えないかもしれませんが、そうでない時は、かなり客席が見えているのです。
そうです、本当にようく見えているんですよ!
※以下は帝国劇場のことを書いた過去記事です。ご参考まで。
携帯の方は”帝国劇場”で記事検索をしていただくと見つかるかと思います。