昨日は8月8日に公開される「HACHI 約束の犬」のプロモーションで来日中のリチャード・ギアさんの記者会見に行ってきました。
映画も試写ですでに見ていて、犬たちの演技に驚かされていたのですが、今回、ギア氏のお話がとても心に残るものでしたので、仕事で書く予定の原稿には載せるスペースがなく掲載できないエピソードを少しご紹介したいと思います。


この映画は日系アメリカ人3世のプロデューサー、ヴィッキー・シゲクニ・ウォン氏が、日本を訪れた際、ハチ公の一生に感動してハリウッドで映画化し、世界中に広めたいと考えたことに始まるでそうです。
ギア氏がこの作品との出会いについてまず語られました。
「これは良い作品だけど、君が演りたいものではないかもしれない」と前置きされてエージェントから送られてきた作品だったそうです。
ところが脚本を読み始めると涙がとまらなくなってしまい、そんなに泣いてしまうなんて、その日はもしかしたら自分は体調が悪いのかなと思い、読むのをやめて、翌日あらためて読んでみたら、やっぱり涙がとまらなくなったのだそうです。そしてその夜、友人と食事をした時に、またそのストーリーを話していたら、泣いてしまったのだそうです。
それで「こんなに自分の心を動かす作品ならと映画化を真剣に考えるようになった」
とおっしゃっていました。そして俳優として出演するだけでなく製作にも加わり、友人でもあるラッセ・ハルストレム氏(「ショコラ」「サイダー・ハウス・ルール」)に監督を依頼したのだそうです。

ギア氏は出来上がった映画についてこう語られました。
「日本の皆さんに敬意を払って作りました。この作品には普遍的なテーマ、そして生きるということのミステリーも含まれています。ハチとウィルソン教授は、“私は犬”“私は人間”という限界を超えた関係で、お互いの心、魂を直にみつめあっている関係、“魂の友”そんな純粋でエゴがない愛と思いやりに満たされている境地だったのではないかと思いました」

前日は渋谷駅前にあるハチ公像と対面され、そのニュースが報じられていましたが、現在のハチ公像を作られた彫刻家の方がいらしてお会いすることができたことにも喜んでいらっしゃいました(一代目は戦時中、軍部に提供してしまい、今のハチ公は一代目のハチ公像を作った彫刻家の方の息子さんが作られたそうです。
また秋田犬は古代から血を継ぐ日本の犬で、初期の犬まで辿れるくらい歴史のある犬で狼にも近い種。そのため秋田犬は人間を喜ばせることに興味がなく、自分がしたいことしかしないので、訓練ということがおよそ難しい犬種なのだそうです。ギア氏は、
「私よりもギャラの高い、全米1のドッグトレーナーを雇いました(笑)」とおっしゃっていました。

ラストの質問で
「ギアさんがずっと待っているものはありますか?」と問われ、
「サミュエルベケットの『ゴドーを待ちながら』をご存じでしょうか? 私はずっとゴドーを待っています」
と笑顔で答えて質疑応答は終了となりました。

「HACHI 約束の犬」HP
http://www.hachi-movie.jp/


会見の様子1   
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私はお話をうかがっていてギア氏の感動が伝わってきて、自分自身も感動してしまいました。
そして親日家であるとはうかがっていましたが、本当に気さくな方で、質疑応答の間も、記者席にすわっている私たちの顔を本当にまんべんなく見て下さるのです。
質疑応答の後には、あらためて撮影時間を設けるため、いったん舞台から降りるのですが、いざ撮影となったら、ギア氏は舞台にすぐには上がらずに、「みなさん、もっと近くにいらっしゃったほうがよいのでは」と自らがカメラマンが陣取っている記者席の前列に歩み寄られたのです。
通訳はギア氏と親交のある戸田奈津子さんがつとめられていました。
「まあ、そういわけにもいきませんかね」とおっしゃって舞台に上がられ、それぞれの方向にポーズをとられ、撮影も無事終了となりました。
戸田さんがおっしゃっていましたが、ギア氏は写真が大の苦手なので、今日は本当に大サービスだったのだそうです。

会見の様子2   
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この映画ではアメリカ東海岸郊外のベッドリッジ駅でハチと大学教授のパーカー・ウィルソンが出会います。ハチは日本から送られる途中で迷い犬になった秋田犬の子犬で、漢字で「八」と書かれたネームプレートをつけていたので、「ハチ」と名付けられます。受取人はみつからず、次第にハチとパーカー教授は心を通わせていきます。そしていつしかハチは毎朝、駅までウィルソン教授を見送り、夕方5時には迎えに行くようになるのですが、ある日、教授は大学の講義中に倒れ、そのまま帰らぬ人となってしまいます。ハチは教授の娘夫婦に引き取られますが、家を飛び出してしまい、いつも教授の送り迎えをしていたベッドリッジ駅で来ぬ人を待つのでした。
随所にハチから見たモノクロの画像が織り込まれ、それがとても新鮮でした。犬からはこんなふうに世界が見えているのかなと犬の気持ちになりました。
ギア氏の思いを聞いて、この映画の、とてもシンプルだけれども、見終わると心がぽうっとあたたまるようなあの感動の秘密が少しわかったように思いました。