5月19日、マウリツィオ・ポリーニ氏のピアノリサイタル最終日で、サントリーホールに行ってきました。究極の演奏といっても言いすぎではないでしょう。年齢をまったく感じさせないあの精緻でそして逆に年齢を重ねたがゆえの円熟味を増した演奏はポリーニ氏だからこそ到達した奇跡の領域なのではないでしょうか。そんなことを思いながら1曲、1曲、1音、1音を聴き、その指の動きを凝視しました。なんという美しさ、そして心地よさでしょう。心から”Bravo!”と賞賛を贈りました。 

今日はもう最初のシューマンのピアノ・ソナタ第3番 ヘ短調 op.14(管弦楽のない協奏曲)で唸らされました。そしてドビュッシーの6つの練習曲(「練習曲集」第2集)では、ドビュッシーの魅力を堪能させていただきました。
そしてアンコールは3曲。ドビュッシーの前奏曲集第1巻から「沈める寺」と「西風の見たもの」。そして最後はリストの超絶技巧練習曲第10番。
その優美で豊かな音色。目も眩むような陶酔感でいっぱいになり、そしてあまりにも激しく魅惑的な「超絶技巧練習曲第10番」。この音もあの音もすべて同じピアノの音なのだろうか? と思ってしまうほどに豊かな音色でした。

「ブラボー、ポリーニ!」 スタンディングオベーションに嵐のような拍手が長い間続きました。
大丈夫、きっとまた会える。私は何だかそう確信して、「Arrivederci(さよなら、また会いましょう)」という思いを込めて、拍手を贈りました。

さて、そんな感動のリサイタルが終わり、帰ろうとしたら、何とサントリーホールの正面玄関が水漏れになっているので、非常口からお帰り下さいとのこと。好奇心旺盛な私は遠回りしていったん正面玄関側まで見に行ってきました。大雨が降っているのかと思うほど大きな水音がしていて、係の方が一生懸命、外の床をモップで拭いていました。ホール内のエントランスは問題ない様子で、ドアの外が大変な様子でした。あの水漏れはホール向かって左の噴水と関係あるのでしょうか。そして非常口の方から出た時には左上方の天上部分がバーン!と音がして、管か何かのまわりに付いているススや砂のようなものがバラバラッと落ちてきて、思わず「キャー!」 警備の方もいたのですが、その瞬間、一番その近くにいたのがまだ小学生くらいの男の子でした。その男の子はもちろん特に誰もケガはなく安心しましたが、思わぬサバイバル状態になってしまいました。ポリーニ氏の超絶技巧ぶりにホールもノックアウトされたのでしょうか? 
他の方も口々に「こんなこと初めてだなあ」と言っていました。もちろん私も初めての経験でした。きっと二度とできない経験かもしれませんね。