先に、このブログで氷川きよしさん中心の観覧記を書きましたが、全体的な印象、感想もぜひ書きとめておきたいと思って、別途書くことにしました。
(氷川きよしさんの記事同様、放送をご覧になったことを前提として書かせていただいているので、ご覧になっていないと細かな説明がなくわかりにくい部分もあるかもしれませんがお許し下さい)

さて、全52組の熱唱。素晴らしい限りでしたが、私としては、久石譲氏によるフルオーケストラでの宮崎駿作品のテーマ曲のメドレーに感動しました。吉岡聖恵さん、平原綾香さん、青山テルマさんの「君をのせて」が素晴らしかったですね。1階席、2階席の通路に所狭しと楽隊の方が並んでの演奏のサプライズにも感動しました。私のすぐ横に楽隊の指揮者(女性です)がいらしたのですが、その凛々しかったこと。そしてあの迫力、高揚感は、かつて故ジュゼッペ・シノーポリによるマーラーの交響曲第8番「千人の交響曲」を初めて聴いた時に似ているなあと、かつての記憶までよみがえってきました。
私は氷川きよしさんのファンでブログのタイトルも氷川さんを掲げていますし、何しろ氷川さんは精力的な活動をされているので、氷川さんの記事を書くことだけで精一杯になり、氷川さんの話題で終始してしまい、それ以外の話題を書く時間がなかなかないのですが、クラシックファンでもあるのです。ジュゼッペ・シノーポリはとても好きな指揮者の一人でした。
話が少しわき道に逸れましたが、そんな素晴らしい演奏が続いてフィナーレで一気に「崖の上のポニョ」。大橋のぞみさんが愛らしくて堂々としていて、最高でした。9歳にして日本中の人を幸福にしてしまうなんて、まるで妖精のようですね。

そして木村拓哉さんのナレーションも素晴らしく、そのたたずまいの美しさに、ほうっとため息が出たほどでした。かつて映画「武士の一分」の時に合同取材があって、お話をうかがったことはあるのですが、その時も、その美貌よりもその聡明さに清々しさを感じたことを記憶しています。今回は舞台間近の席で観ていたので、カメラに映っていない時はもちろんスポットライトもあたっていない時の様子も逐次見えていたのですが、何気ない立ち居振る舞いの美しさ、そしてスタッフとやりとりしている時の真剣さ、飾らなさ、温かさ、タイミングを待つ時の集中力などなど、その人間的な魅力に感動してしまいました。
そう、木村さんの関連でもうひとつ。北島三郎さんの「北の漁場」も素晴らしかったですね。私は父と一緒に新宿コマ劇場での公演を観たことがありますが、まさかあの船にSMAPのメンバーが乗船するとは! 本当にスペシャルバージョンだったと思います。北島さん、本当に嬉しそうでした。木村さん、何か感動していたようで、目が潤んでいませんでしたでしょうか? 私の想像ですが北島さんの熱唱を間近で聴き、さらに船上からNHKホールを見渡して感動されていたのではないでしょうか。そんな筋書きのない木村さんの様子に、観ていて感動がさらに増しました。

歌唱では天童よしみさんが圧倒的だと思いましたが、森進一さんの魂の叫びのような熱唱も心揺さぶられました。この人はちょっと、なんていう人はまったくいず、熱唱につぐ熱唱でしたが、個人的な主観でいえば、宮沢和史さんの音楽は大好きなので、今回の宮沢和史inガンガ・ズンバ&ザ・ブームの「島歌 紅白スペシャルバージョン」はまさにスペシャル。宮沢さんの歌声、音楽に熱く酔わされました! ちなみに大トリの氷川きよしさんの「きよしのズンドコ節」の間奏、ラテンバージョンの編曲入っていましたよね。
それにアンジェラ・アキさん、平井堅さん、秋川雅史さん、秋元順子さん、いきものがかりが秀逸だと思いました。そして実際にナマで聴いてみたら、かなりイイと思ったのはキマグレンでした。ファンの方にはいうまでもないことなんでしょうけど、あの迫力には引き込まれました。そして魅せるということではあゆ(浜崎あゆみさん)と倖田來未さんがサイコーでした。あゆのあの両手を広げた時の美しさ、ゾクゾクッと鳥肌たちました。ケガをされていたのにあれほどの舞台ができるなんて信じられませんね。歌の素晴らしさは言うまでもないですけど。そして倖田來未さんのダンス、ウットリしました。あの足さばき、なんてかっこいいんでしょうね。ドレスも倖田さんのスタイルの美しさを際立たせ、かつダンスに花を添える素晴らしいものでした。どんな方がデザインされたのでしょう。お見事でした。
五木ひろしさんの「凍て鶴」、三木たかしさんからの手紙が胸に響きました。「凍て鶴」という名曲が生まれた背景にはそんなことがあったのですね。歌を聴く人だけでなく、作る側にも希望やパワーを与える五木ひろしさん、そしてその熱唱ぶり、本当に立派だと思いました。ベテランの迫力ということでもう一人挙げれば石川さゆりさん。「天城越え」のあの迫力に、誰にも真似のできない、あの曲への執念、そして歌手としての底力を感じました。
そして、水谷豊さんのあのアガリぶり、「何で出演引き受けちゃったのかなあ」って思っているだろうなって想像してほほえましく思えました。そんな水谷さんの「カリフォルニア・コネクション」、心に響きました。水谷さんが歌う直前の本木雅弘さんのコメントも素晴らしかった。それと声を聴いていて、歌手になるべくして生まれた方なんだなってあらためて思わされた方は平井堅さん、平原綾香さん、徳永英明さん。どうしてこの世にこんな声の方がいるんだろう、やっぱり皆のために歌う使命をおびた方なんだなってつくづく感動しました。
ジェロさんの歌唱も素晴らしかった。お母様が客席にいらして、カメラに映る前から涙されていて、その涙の美しさ、そしてからだを震わせて泣かれていらしたその様子にまたまた感動してしまいました。そしてそのお母様を間近に見ながら、涙をこらえて歌った歌唱とその姿に場内は愛一色に包まれたように感じられました。昨年発売されたジェロさんのアルバム「カバーズ」も聴きましたが、出来栄えに感心しました。収録曲では「氷雨」の評判が良いようですが、私はフランク永井さんの「君恋し」なんて、完全にジェロ流になっていて、ジャズを愛したフランクさんの歌心を継承してくれる方が現れたのかなと嬉しくさせられたのです。

私があえて言うまでもないかもしれませんが、司会もよかったですね。私は中居さんてとても好きなんです。テレビで中居さんの姿を見ると、それだけでほっとするのです。中居さんの人を安心させる力って天賦の才能だと思いますし、普段どんなふうに生きているのか、その人間性がそのまま現れているのだと感じました。
俳優さんとしても「模倣犯」や「私は貝になりたい」など、良い作品を生み出されていますし、これからもますますその活動の範囲を広げていらっしゃることでしょう。そして仲間由紀恵さんのナレーションの確かさ、その存在の潔い美しさにうっとりさせられました。そんな二人のキメるところは決め、リラックスさせるところはさせるという緩急自在のコンビネーション、本当にいい感じだったと思います。

そしてNHKのスタッフの働きぶりにも心打たれました。始まる前に松本和也アナウンサーが、「どうぞ歌手の皆さんの熱唱と舞台裏のスタッフの奮闘ぶりをお楽しみ下さい」とおっしゃっていましたが、本当に素晴らしかったです。本番直前にスタッフの方から「1列目、2列目の皆さん、途中、撮影や進行の都合上、カメラが目の前に来たり、私たちが前に立ったり、舞台が見えにくくなることもあるかと思いますが、どうか撮影のためとご理解下さい」と口頭で挨拶がありました。
平井堅さんと中島美嘉さんの時に配布されたLEDライトを点灯するように言われ、リハーサルもしていたのですが、本番でもちゃんとLEDを点灯させて左右に振り、その様子は瞬く星のように見えました。その時(二度ともです)、担当ディレクターさんが客席を振り返っては眺め、それはそれは嬉しそうに、うんうんと頷いている姿が目に入り、見ていた私もその様子に胸が熱くなりました。
以前、劇作家の三谷幸喜さんが、審査員として観覧した後、エッセイで「もう一度見てみたいと」書かれていました。神技のようなスタッフの奮闘ぶりと、その年を代表する歌手の方々の熱唱に真底感動されたのだそうです。本当にそう思います。審査員の一人、松本幸四郎さんは、人を感動させることの難しさとそしてその素晴らしさについて今回も語られていましたが、心からそう思います。今回は出演者の皆さん、テーマになっていた「歌の力、ひとの絆」を意識されて、心をこめて歌って下さったと感じます。幸福を平和を願って歌ったのです。2009年はそんな思いが世の中を明るく変えていってくれるはず。そんな気がしました。
紅白歌合戦は5千人以上のスタッフが結集して作られているとうかがいました。本当にお疲れ様でした。
そしてありがとうございました。
(この記事を読んで下さって、何か通じるものがありましたら、昨日の氷川きよしさんを中心に書いた記事もお読みいただけたら嬉しいです)