「必ず会いに行くから、どうか待っていて」過去編 627 ※ | 空に揺蕩う 十時(如月 皐)のブログ

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「最後の忠告です。刃を収め、ここを立ち去ってください。良き国を作りたいと願うは崇高。ですが、そのために差し出す首などひとつもありません」

 どうか戦わせないでくれ。そう叫ぶように雪也は願ったが、彼らは刀を鞘に収めることなく、その刃を雪也に向けてジリッ、と小さく地を鳴らした。

「その崇高なる志のために、必要な首もあるのだ」

 それが春風を、ひいては衛府を止める枷となる。

「……許してくれ」

 もはや説得は不可能と断じて、男は小さく呟くと自らの意を示すように地を蹴った。そんな彼に続くように、皆が一斉に雪也に向かってくる。四方から振り下ろされる刃を避け、弾き、雪也は身を屈めて彼らの足を払った。その細い身体から繰り出されているとは思えぬほどの力に男たちは体勢を崩し、刀を握る手が僅かに緩む。その隙を見逃すことなく、雪也は手首に柄をめり込ませた。

「グッ――」

「姑息な真似をッ!」

 刀を持っていようと雪也は力のないただの薬売り。その命を奪うのは容易いと考えていた男達は、思わぬ反撃をくらって顔を歪める。無意識に零れた悪態に小さく笑みを浮かべた雪也に、冷たい何かが背筋をつたった。

「私を葬るために大勢で押しかけて来た者の言う言葉ではありませんね」