「ありあまるほどの、幸せを」 106 | 空に揺蕩う 十時(如月 皐)のブログ

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「……それより、陛下はともかくとして何故あなたがここに? 今は仕事中では?」

 胸の内を悟られたくなくて、アシェルは気になっていたことを口にする。式典の時に見たものとは少し形の違う白銀の隊服をチラと見れば、ルイは忘れていたとばかりに目を僅かに見開き、次いで苦笑した。

「急に雨が降ってきたので訓練を切り上げて昼食を摂るよう指示を出していたら、陛下の侍従に呼ばれまして。それから陛下とこちらに来ましたから、正直なところ私もあまりわかっていません」

 ルイも説明なくここに来たと聞いて、思わずアシェルは未だ楽しそうにフィアナの髪を撫でながら話しているラージェンに視線を向けた。隠す気の無い視線にラージェンもすぐ気づいたのだろう、穏やかな笑みを浮かべたままアシェルとジーノに向き直る。

「あぁ、ごめんね。とりあえずルイもジーノも座ってくれ。ルイは私が呼び出してしまったから昼食がまだだったな。誰か、ルイに昼食の用意を」

 自ら椅子を引いてフィアナを座らせながら侍従に命じ、その隣にラージェンが座ったのを見て、ルイ、ジーノと座る。既に手配していたのか、侍従が手早くラージェンとルイの昼食を用意して、アシェルとジーノにとっては緊張だけが支配する昼食が再会された。