「例えば、周が無茶をしたなら、雪也は怒っただろう。その表現の仕方が今回の周たちと違ったとしても、それでも頭の中では〝どうしてそんなことをするんだ〟と怒りを覚えただろう。だが雪也、怒ったら、それで嫌いになるのか？」
ピクリと、雪也の肩が震える。脳裏に蘇ったのは、蹲った周の姿だった。
雪也の為に米を炊こうとして、できなくて、手を火傷していたというのに米を台無しにしたことばかりを謝ってきた、あの日の周の姿。
そう、確かにあのとき雪也は、怒っていた。でも、怒ったけど、それは――。
「周が雪也の理想通りでなくなったら、何かを間違えてしまったら、失敗してしまったら、雪也は周を嫌いになるのか？ 利用価値の無い周は、必要無いと切り捨てるのか？」
必死に慕って、手を伸ばしてくる子供。常は無表情なのに、雪也を見る時は少しだけ微笑んでいて、あの子が作ったご飯を美味しいと褒めると、嬉しそうに頬を染めながらモジモジと身を揺らして。
確かに周は、あまり手のかからない子だ。我儘を言わないし、聞き分けも良い。細々としたところでいつも雪也を助けてくれる。でも、だから周と一緒にいるわけではない。