誰も抵抗できません。
「やっぱりアイスはコーンよね。」
Yさんもブルーベリーアイスを完食。
さらに、「午後ティー」でのどを潤されます。
ちなみに、「ストレート」ね。
私もストレート。
恋と紅茶は、ストレート。
多分、Yさんも(笑)
飲み終えられたYさん。
ペットボトルをそのままゴミ箱へ。
生ゴミと一緒。
「あっ、Yさん。」
「は?」
「分別しなくていいんですか?」
わが堺市でもね。
ペットボトルは当然分別。
大阪市も多分そうでしょう。
「ああ、大丈夫なんです。」
「えっ、大丈夫なんですか?」
そう云えばね。
Yさんが分別しているところ、見たことないや。
ペットボトルも、缶も、生ゴミも。
全て一緒。
ビンは、そもそも捨てないしね(笑)
人によって態度を変えないYさん。
そう、ゴミさえも差別されないのだ。
「けど、ゴミ収集のおじさんに云われませんか?」
次の瞬間。
マイルド・コントロールが発動。
「『あら、うっかりしてました。』って云ったらね。」
「はあ」
「大丈夫なんです。」
「・・・。」
それね。
世間一般では「大丈夫」って云いません。
どうやら、発症されたようですね。
Yさんのもうひとつの持病。
「突発性自己都合性記憶障害」
一定の条件下で突然発症します。
「最近、物忘れがひどくて。」
というセリフとセットで。
また、合併症として、
「突発性自己都合性難聴」
も併発されます。
「最近、耳が遠くなって。」
というセリフとセットで。
Yさんは、好奇心旺盛な方ですからね。
記憶力も抜群。
また、ご近所の噂話やスキャンダルなど。
東海林のりこ顔負けのデビルイヤー。
なのに、突然、発症されるんですよね~(笑)
原因不明。
「浪花の風土病」とも。
ブラックジャックもお手上げの不治の病。
まさに「あっちょんぶりけ」。
感動冷めやらぬひと時。
「あっ、そうそう、カレーを忘れてたわ。」
「は?」
物覚え、いいじゃないですか。
って、キケンだ。
頭の中でアラームが鳴り響きます。
冷蔵庫からタッパーを取り出されるYさん。
うわー、たっぷり入ってるし。
デザートのアイスも食べ終えて。
今から、カレーはないでしょう。
ここは、「お話」に持ち込んで、危機を逃れましょう。
「ほおー、美味しそうな自家製カレーですね。」
「そお、りんごとバナナとワインも入れて。」
「盛りだくさんですね。」
「マンゴピューレでチャツネを。」
「そりゃ、本格的ですね。」
「でしょ~。このカレーはね。(後略)・・・。」
スパイシー・ドラマ『カレー一代記』が始まりました。
「はあ」
「ほお」
「そうですか」
右から左へスルーします。
「でも、残りはそれだけですか?」
「そお、いろいろ配りましたから。」
でしょうね。
作られる時は、大鍋ですから。
いつものI神社の社務所、銀行さん、出入りの業者さん。
「みなさん、喜んでおられたでしょう。」
「そおそお、今回はHくんにも。」
「Hくん?」
初登場だな。
誰だろう?
「向かいの交番のお巡りさんです。」
「へえー、お巡りさんですか。」
と云うのもね。
先日、事件が発生。
なんとタバコの自販機が壊されたんです。
どうやら、深夜にやられたみたいでね。
朝、起きたら、ケースが割られてたんですって。
幸いお金は盗られてません。
窃盗目的ではなかったようです。
キレただけなのかな?
当然、修理しなきゃいけないでしょ。
保険の関連もあるので、警察に。
Yたばこ店の向いは、公園でね。
その入口に交番が。
「じゃあ、すぐに被害届を?」
「い~え~、まずはHくんを呼んでね。」
「はあ」
「カレーを食べてもらいました。」
「は?カレーですか?」
ここから、始まるのです。
「マイルド・コントロール」の奥深き妙技が。
「そしたら、『もうご飯を済ませました』って。」
「何時頃だったんですか?」
「夜の8時頃かしら。」
そりゃ、食べてるでしょ。
しかし、そんなことはね。
Yさんには関係ありません。
免責対象にはならないのです。
<H巡査との会話を再現>
「だったら、お肉をたっぷり入れてあげるからね。」
「はあ」
「カレーだけで食べなさい。」
「・・・。」
スゴイでしょ(笑)
さすがYさん。
「もう一人いるんでしょ?」
「はい、二人です。」
「じゃあ、これくらいね。」
で、タッパーにてんこ盛りにしてね。
「いま、8時でしょ。」
「はい」
「9時までに食べて、タッパー返してね。」
「・・・。」
これまた、スゴイでしょ(笑)
H巡査が頼んだわけじゃないのに。
っていうか、お腹減ってないし。
まあ、どうされたのか知りませんが。
とにかく、9時に返しに来られました。
「ごちそうさまでした。」
「どう、お口にあいました?」
「はい、市販のカレーとは全然違いますね。」
「でしょ~。このカレーはね、(後略)・・・。」
で、ここからが本題。
「ついでに、頼みごとがあるのよ。」
「はあ」
自販機の被害について説明されます。
「・・・と云うことで、保険を使うのに被害届が要るのよ。」
H巡査は、実直な好青年らしくてね。
「では、被害届を提出する手順ですが・・・。」
ってかんじで、懇切丁寧に説明されたんですって。
届けに必要な項目とかね。
破損状況の写真が必要だとか。
「あら」
「ほお」
「そうなの」
で、ひととおり説明を受けた後にね。
「・・・で、最初にどうするって?」
「いえ、だからですね。」
以下にまとめてみました。
<被害届をラクに入手する手順>
1.H巡査を呼ぶ。
2.カレーを食べさせる。
3.タッパーをすぐに返させる。
4.被害について説明する。
5.H巡査が被害届の手順を説明する。
6.テキトーにあいづちを打つ。
7.H巡査が内容を確認する。
8.突発性自己都合性記憶障害を発症する。
9.再びH巡査が内容を説明する。
10.突発性自己都合性難聴を発症する。
11.H巡査が根負けするまで5~10を繰り返す。
以上
その結果、
「最後には、『僕が全部やります』って。」
「・・・。」
スゴイ。
スゴ過ぎる。
人間の可能性って、こんなにも無限だったのですね。
鳥人間コンテストもびっくりの未知なる領域への挑戦。
「取調室にカツ丼」
より
「Yさんにマイルド・カレー」
警察のお株を奪う自白誘導。
それでいて、決してカドが立ちません。
「やってちょーだい。」
ではなく、
「私がやります。」
と相手の口から。
あくまで、マイルド。
バナナやマンゴーで、味つけもマイルド。
「マイルド・カレー」
しかし、その実体は?
食べた時点で落ちたも同然。
「マイルド・コントロール・カレー」
さらに、まだ続きがあってね。
「で、Hくんにケータイの番号も教えてもらいました。」
「えっ、個人の携帯ですか?」
「だって、出勤日を確認しとかないとね。」
「・・・。」
そう、交番勤務は三交代制。
H巡査は常駐してません。
せっかく洗脳・・・いえ、協力してくれたH巡査をね。
Yさんが手放されるわけがありません。
闇金もびっくりの追い込みです。
これでH巡査もね。
「Yさん友の会」
へ晴れてご入会。
以後、食べることには心配いりません。
引き換えとして、
公私にわたって貢献されることでしょう。
・・・合掌。
もし、あなたが手作りカレーをごちそうになった時、
「ついでに、頼みゴトがあるんだけど。」
と云われたら・・・。
マイルド・コントロールの黒い霧。
今まさに、あなたを包み込もうとしているのかもしれない・・・。
- つづく -