昨日は映画、今日は読書…


 

 

まるで初夏のような陽気だった昨日は
街に行くついでがあったので

思い立って映画を観てきました。



始まりは図書館で「旅立ち」と銘打った
コーナーでつい手に取ってしまった本、

「四月になれば彼女は」(2016年 刊)

映画プロデューサー、小説家、脚本家など
マルチに活躍されている 川村 元気 氏 著…

 

 

まずウユニ湖の写真の装丁に惹かれました。

“天空の鏡”と呼ばれる逆さまに繋がる
人物とかの写真で有名ですよね…


それに聞いたことのある名前…

サイモン&ガーファンクル(S&G)の歌に
こんな題名あったのでは…


それより巷では3月から公開されている
注目映画の原作として有名だとかで…

しかもどうやら「旅」でなく「愛の不在」
を描いたストーリーのようです。


私は邦画はほとんど、恋愛系も興味薄くて
それにシリアスな映画も苦手…

映画くらい現実を忘れて明るいものが
観たいので、人気俳優が出演していても…

でも原作があるのなら先に映画を観たい派、

映画は大抵かなり圧縮しているので
原作との差異に気を取られているより
流れていく映像を感じることに集中したい…

 

 

内容は公式サイト、チラシを引用します…

「あのときのわたしには、自分よりも大切なひとが
   いた。それが、永遠に続くものだと信じていた」

   四月。精神科医の藤代俊(佐藤健)のもとに、
   かつての恋人・伊予田春(森七菜)から手紙が届く。

  “天空の鏡”と呼ばれるウユニ塩湖からの手紙には、
   十年前の初恋の記憶が書かれていた。

            ウユニ、プラハ、アイスランド。
        その後も世界各地から届く、春の手紙。

   時を同じくして藤代は、婚約者の坂本弥生
   (長澤まさみ)と結婚の準備を進めていた。
   けれども弥生は突然、姿を消した。

「愛を終わらせない方法、それはなんでしょう?」
   その謎かけだけを残して−−−−


   春はなぜ手紙を書いてきたのか? 
   弥生はどこへ消えたのか? 
   ふたつの謎は、やがて繋がっていく。

「あれほど永遠だと思っていた愛や恋も、
   なぜ消えていってしまうのだろう」

   現在と過去、日本と海外が交錯しながら、
   愛する人をさがし求める“四月”が始まる。



主役の佐藤さんも長澤さんも美男美女…

春役の森さんは10カ国程のロケをしたとか
大変だったそうですがその成果があって

とても美しく惹かれる景色でした。
映画館で観ることができて目福でした…

最初の地、ウユニ。次の地、プラハ、
最後の地、ブラックサンドビーチ…

私には到底行けそうもない場所ですが憧れ…


主題歌は 藤井 風 さんの「満ちてゆく」
(歌詞を抜粋させていただきます)

走り出した午後も
重ね合う日々も
避けがたく全て終わりが来る

あの日のきらめきも
淡いときめきも
あれもこれもどこか置いてくる

それで良かったと
これで良かったと
健やかに笑い合える日まで


原作の本の世界が再現されていますね…





今日は天気が崩れ、夕方まで雨が降り続き
冷たい風が吹いていました。

ベッドに入ったまま原作の小説を読んで
映画との違いがあり過ぎて驚きました…

大筋は変わりませんが細かい内容がだいぶ
違うので興味があれば一読をお勧めします。

もちろん原作者の川村さんが納得して
シンプルでわかりやすい効果的な設定に
変えたと思いますが

小説のように月毎に淡々と進んでいく方が
味があって私は好みでした…

 

 

小説のあらすじを記します。長いですが
たくさん響く言葉が綴られていたので…
青字は小説より引用させていただいています
 
   九年ぶりに、大学時代の恋人ハルから
   ウユニ湖を旅していると手紙が届きます。
 
…いまわたしはボリビアのウユニという街にいます。
   真っ白な塩の湖に囲まれた街。標高は3700m。

   ここの塩湖は雨が降ると、水が浅く溜まり鏡の
   ようになります。その鏡は天空を映し、世界
   すべてが空になるのです。


四月になれば彼女は

   医学部3年生の藤代は写真部に入部希望の
   新入生ハルと四月に出会い距離は縮まる…
 
「私は雨の匂いとか、町の熱気とか、悲しい音楽とか
   悲しい音楽とか、嬉しそうな声とか、誰かを好きな
   気持ちとか、そういうものを撮りたい」


五月の横顔

   大学を卒業して母校の附属病院の精神科医
   となった藤代は、3年前から獣医の弥生と
   同棲中で次年四月に結婚式を予約するが…

「でも…確かに最近ないよね」
「誰かを想って胸が苦しくなったり、眠れないほどに
   嫉妬したり、そういうこと」


六月の妹

   大学時代の続き…写真部OBの大島はハルへ
   横恋慕、藤代の両親の離婚、部活動を通し
   ハルと藤代は初めての恋人になる…

…恋は風邪と似ている。風邪のウィルスはいつの間
   にか体を冒し、気付いたら発熱している。
   だがときが経つにつれ、その熱は失われていく。
   熱があったことが嘘のように思える日がやってくる


   現在…弥生の妹、純は3年前に結婚して
   いるがセフレはいて、藤代も誘惑される…

七月のプラハ

   チェコのプラハより、ハルから手紙が届き
   毎日天文時計の写真を撮り続けていると…

   藤代と別れるまでの日を思い出しながら…

…でも写真を撮り続けているうちに、自分の気持ちが
    不思議と掴めてきたのです。わたしは時計でなく
    ”時間”を撮りたかったのだと

   誰かを愛しているという感情は一瞬だということが
   いまならわかります。
   あのときのわたしは、それが永遠に続くものだと
   信じていた。あまりに幼稚で無防備。
   でもあの頃のわたしの方が、いまのわたしよりも
   何倍も力強く生きていた気がするのです。


   S&Gの「四月になれば彼女は」はOBの
   大島がウクレレで弾いていたのですね…

…四月にやってきた彼女に僕は恋をした。けれども
   次第に彼女の心は遠ざかり、やがて去っていく。
   けれども僕は、あの時の気持ちを忘れない…
   

   精神科の後輩医師、奈々は美しく優秀で…

「愛情といえば何もかもが許されるのが嫌なんですよ
   愛し合うふたりは無条件で美しくて素晴らしいもの
   だという感じが」


八月の嘘

   藤代は純のことを友人のタスクにも相談…

「でもさ、フジさん、人間ってのは本当に怖いですよ
   憎んでいる人より、そばにいて愛してくれる人を
   容赦なく傷つけるんだから」


九月の幽霊

   大学時代の続き…写真部OBの大島が
   自殺を図り、ハルは巻き添えになりその
   疎外感で藤代はハルと離れていきます。

   …なぜ人を愛するのか。なぜそれが失われていくのを
   止めることができないのか。


   現在…結婚式があと半年に迫り弥生は言う…

「でも藤代くんはまるで幸せじゃないみたい」

十月の青空

   アイスランドのレイキャビクより
   ハルから手紙が届きました。

   旅の途中、大島が事故で亡くなったと知り
   ハルは高熱で寝込み意識が彷徨います。

…私は、氷河を越えた果てにある海にたどりついた。
   その海は漆黒で、波はどこまでも白く、フィルムの
   白黒写真のような世界が広がっていました。

…辛い。苦しい。それでも人は恋をする。
   それはなぜなんだろう。


十一月の猿
 
   藤代が研修医を終えた頃、弥生と知り合い
   弥生は他の人と婚約中で、藤代はハルとの
   思い出を語ります。

「彼女のことが好きだった?」
「たぶん。でも、僕は手放してしまった」

「一度だけ、ふたりで海外旅行に行ったことが
   あるんです。インド最南端のカニャークマリと
   いう町に。そこで僕らは朝日を見るはずだった。
   でも見ることができずに帰ってきた」

…あの頃の僕らはいつでもまた来ることができると
   信じていた。いつまでもこの恋愛が続くと確信して
   いたんです。なんの保証もないのに」


   そしてだんだんとお互いに心を開き二人で
 歩み始めます。ただし

…愛を終わらせない方法はひとつしかない。
   それは手に入れないことだ。決して自分のものに
   ならないものしか、永遠に愛することはできない。


十二月の子供

   弥生が突然いなくなりました。藤代は妹の
   純に尋ねるが、純はお腹の子供に夢中…

   精神科の後輩の奈々は恋愛に手厳しい…

「ほとんどの人の目的は愛されることであって、
   自分から愛することではないんですよ」

「それに、相手の気持ちにちょっとでも欠けている
   ところがあると愛情が足りない証拠だと思い込む。
   男性も女性も、自分の優しい行動や異性に
   気に入られたいという願望を、
   本物の愛と混同しているんです。」


   そして弥生の手紙が届きます。

一月のカケラ

   東京から遠く離れて弥生の手紙の最後には…

…私たちは愛することをさぼった。面倒くさがった。

…私は失ったものを、取り戻したいと思っています。
   たとえそれが、カケラだとしても。


二月の海

   藤代は海辺のホスピスでハルが末期がんで
   亡くなったと知らせを受けます。そして
   訪ねるとハルのカメラを渡されます。

   最後に撮りたかった景色は間に合わない…

   死の間際に思い出すのは恋の記憶だったり
   するのでしょうか… こんな言葉が…

「生きている実感は死に近づくことによってハッキリ
   としてくる。この絶対的な矛盾が日常のなかで
   カタチになったのが恋の正体だとボクは思う。
   人間は恋愛感情の中で束の間、いま生きていると
   感じることができる。」


   友人のタスクに弥生の行方を相談するも
   ちゃんと探しているのか窘められます。

「でも僕、思うんです。人は誰のことも愛せないと
   気付いたときに、孤独になるんだと思う。
   それって自分を愛していないってことだから」


   家に帰り弥生の部屋でハルの最後の手紙を
   見つけます。そして弥生が読んだことも…

三月の終わりに彼は

   ハルが最後に見たかったカニャークマリは
   間に合わずホスピスから投函しました。

…最後の手紙を書きながら気づきました。
   わたしは、わたしに会いたかった。
   あなたのことが好きだった頃のわたしに。

…私は愛したときに、はじめて愛された。
   それはまるで、日食のようでした。
「わたしの愛」と「あなたの愛」が等しく重なって
  いたときは、ほんの一瞬。

…けれども、その一瞬を共有できたふたりだけが、
   愛が変っていくことに寄り添っていけるのだと
   わたしは思う。

   いまフジが愛する人がいて、その人がフジのことを
   愛してくれることを願っています。
   たとえそれが一瞬だとしても、
   その気持ちを共にしたひとりの人間として。


   そして三月の終わりに彼は旅立ちます。
   インド洋とアラビア海とベンガル湾、
   三つの海流が交錯する聖地に… そして…


この先は是非本を手にしてください。

たくさんの引用をありがとうございました…


サイモン&ガーファンクルの歌詞も登場…

四月になれば、彼女はやってくる
   小川に水が満ち、雨で潤う頃

五月、彼女は僕のそばにいる
   僕の腕のなかで、ふたたび安らぐ

六月、彼女の様子が変わる
   落ち着きなく歩き、夜に彷徨う

七月、彼女は去っていく
   なんの予告もなく

八月、彼女はきっと死んでしまう

  秋の風が肌寒く、冷たく吹くなかで

九月、僕は忘れない 生まれたばかりの愛も
   やがて移ろい過ぎてゆくってことを


季節は巡って春になる…

藤井 風 さんの「満ちてゆく」はこの続編
ともいえるのではないかな…

開け放つ胸の光
闇を照らし道を示す
やがて生死を超えて繋がる
共に手を放す、軽くなる、満ちてゆく

晴れてゆく空も荒れてゆく空も
僕らは愛でてゆく
何もないけれど全て差し出すよ
手を放す、軽くなる、満ちてゆく