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台湾日記1「台湾旅リベンジ!」
台湾日記2「台北動物園の多摩動物園っぽさ」
台湾日記3「オッサンと私」
台湾日記4「九份は無数にある」


12月31日、日中はずっとそわそわしてた。カウントダウンをどこで過ごすかまだ決めていなかったから。
基本は旧正月といえども、台北はCNNの「世界おすすめ年越し10大都市」の9位にランクインするほど盛り上がる。一番のメインはアジア1高いビル「台北101」の花火で、各市で大規模な無料ライブも開催される。でもでも、いきなりふらっと遊びにきた観光客が、花火をナイスな位置から生で観て、かつ地元の人でも命からがらと聞く大混雑の帰路に耐えることができるのか?全くもって自信がない。それだったらどこか素敵なライブハウスを見つけて、カウントダウンイベントに参加するとか、もしそれも見つけられなかったら、いっそホテルのテレビで花火やライブの生中継でもゆったり観るかな~とか思ってた。それに、台湾に到着してすぐはロンTやパーカーで快適に過ごせていた気候も、1日前からこの冬初めてだという寒波が到来して、いきなりフツーに東京の12月くらい寒くなっていたのですっかり弱気になってた。


ということで今日の本番は夜だし、体力温存しつつ、ひょんなことから花火が綺麗に観られて人もなぜか少ない穴場スポットが見つけられたらいいなとわずかな期待を持って昼間はぶらぶらしてた。どうしようもないくらい無計画に街をさまよった。ちょうど台湾大学付近の学生街を歩いているときに、市場を見つけたので、ヒマだし、と思って入ってみた。
こじんまりしたその市場は、せまくて暗いのに活気があって高円寺高架下のアーケード街みたいだった。八百屋、魚屋、お菓子屋などの小売店と、いい匂いがただよってくるラーメン屋や食堂が並ぶ。お客さんはどちらかというと飲食店に集まっていて、八百屋さんなんかはちょっと暇そうだった。かまってもらえるかもしれない。八百屋のおばちゃんに「にーはお、このピーマンめちゃデカいっすね!」と中国語で話しかけると、おばちゃんは無言でカゴをこちらに投げてきた。買うんだったらこのカゴに入れろ。無言でもよくわかった。おばちゃんすごい。私はめげずに、「日本のピーマンはもっと小さいよ~」とか畳み掛けるも、おばちゃんは笑顔で無視だった。経験上、ここであきらめずにもっと押せば仲良くなれるおばちゃんもいるから、こんなところで折れてはだめだと分かっているけれど、話題を変える勇気もなく、もう中国語で話せるピーマンにまつわるフレーズが見つからなかった。おばちゃんの無言の圧力に負けて私はピーマンを買った。その結果、フルーツならともかく、生野菜は旅行者が持て余す所持物ナンバーワンだと身をもって実感することができた。


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(いらないって言えば良かったのに)



巨大ピーマンをリュックに入れたまま、今度は台湾大学に潜入してみることにした。かなり広いし1つ1つの校舎も大きい。高さ10メートルはあるヤシの木がかなり道幅の広いメインストリートの両側にずっと並んでいて、自分がすごく小さく感じるくらい壮大だった。歩いても歩いても目の前の校舎にたどり着けない。これ、遅刻しそうって時だったら絶望するだろうなぁ。数分歩いているとヤシの木の間から台北101ビルの先端がちょこっとだけ見える場所を発見した。すごく遠目に、全体の5分の1くらいが見えている。あ、これはもしかして穴場かも!ヤシの木の間から見えるなんてオツだし!でもあれかな、ここは夜になると台北大学の学生達でスペースが埋まっちゃうかな?いろいろ考えて、一応頭の片隅に入れておくことにした。

台湾大学散策の帰りに駅の地下通路を歩いていると、学生っぽい人たちが20人くらい集まっているのを見つけた。彼らは通路の両側に並んで、ギターや打楽器を演奏しながら、人が通るたびに歌を歌っている。よくわからないけれどたぶん、新年おめでとう的なスタンス。地下道に歌声がもわもわ響いていい感じ。すごく楽しそうなので一番端の、太鼓を持ったメガネの男の子に「なんていう太鼓?」と話しかけた。「ホニャララだよ」。教えてくれたけどなんて言ったかわからなかった。
私も参加したいなぁ~、でもどうしたらいいかな。上手く言葉に表せなかったので思わずメガネくんの太鼓をポンポンっと叩いた。メガネくんも叩いた。そして交互に「ポンポン」「ポンポンポン」「ポンポン」「ポンポン」。謎の太鼓コミュニケーション。しばらく繰り返すと、彼は私が合唱に参加したいってことが何故かわかったらしく太鼓を私の肩にかけてくれた。一曲太鼓で参加したあと、「新年快乐~(あけましておめでと~)」と言い合って別れた。
さて、このあとどうしよう。


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(ずーっと同じ歌を歌ってる)



10日くらいの旅だったら、なんとしてでもリュック1つで出かけたい。重たいスーツケースを引きずって歩くと、物質的距離以上に遠く感じてしまうから。リュックもできるだけ軽くしたくって、着替えはあんまり持ってきてなかった。旅も4日目なのでそろそろ洗濯しないとまずい。今夜のカウントダウンの過ごし方は已然ハッキリしてないけれど、とりあえずコインランドリーを探した。
コインランドリーは台北駅から10分くらい歩いたところにあった。観光もグルメもいいけど、旅先で洗濯をしてる時間が私は結構好き。あくまで旅人なんだけど、現地で生活している気分が少し味わえるし、手持ちの衣類を全部洗濯してカバンにもう一度つめたら、また旅が新しくスタートするみたいな気分になれるのも気持ちいい。


コインランドリーを探すのと、洗濯機を回すのと、乾燥機に移し替えてまた回すので、合計3時間くらいはつかってしまった。洗濯が全部終わったらもう午後21時。あと3時間で来年!結局、人ごみを避けて花火が観られるナイススポットも、面白そうなカウントダウンイベントがあるライブハウスも見つけられなかった。でもせっかくの海外旅行で、「コインランドリーに行った後ホテルでテレビを見る年越し」は絶対もったいない!と思いはじめて、いっそ真っ正面から勝負しようという気になった。こうなったら、台北101ビルの最寄り駅で降りて、一番近いところから花火を観るぞ!


地下鉄MRTは激混み、というほどでもなかった。いつもよりはかなり混んでいるけれど、土日の新宿駅より少しマシな程度。そうだった。私は人口密度めちゃ高の東京で鍛えられてきたんだった。いまさら並大抵の混雑でビビっていてはいけない。
市政府駅で降りると、外はもうお祭りモードだった。電飾のおもちゃや防寒具を売る屋台があちこちに出てる。私も光るツノを購入して、人の流れについて歩いていく。少し歩くと大通りに出た。大通りは歩行者天国になっていて、かなり広い道路なのに人で埋め尽くされている。みんなが同じ方向に大行進していくのが面白かったけど、非日常的な光景だったのでちょっとこわさもあった。世界の終わりってこんな感じなのかも、みたいな。
でも、今年の終わりで来年のはじまりの、1年で1度きりのこの瞬間を、外に集まって大勢でむかえるのっていいな。歩行者天国をずらずらと歩いているだけでもう、来てよかったなと思い始めてた。

台北101ビルは、駅を降りてすぐの場所からは3分の1くらいしか見えていなかったけれど、流れに乗ってどんどん近くまで歩いていくと少しずつよく見えるようになっていった。このあたりでいいかなと自分なりの観覧場所を見つけた人たちが、流れからはずれて立ち止まったり座ったりしだした。
私も適当なところで立ち止まって、0時までの1時間を待つことにした。何も敷かずに地べたに座る。なんだ、とってもよく見えるじゃん。それに人ごみもむしろあったかく感じられて楽しい。


0時になるほん数分前、前触れもなく花火は始まった。え、もっとこう、「3、2、1、ドカン!」とくるものじゃないのか。こんなに大勢の人の不意を打つなんてなかなかない。
花火は噂に聞いていた通り、ビルから直接吹き出して、ビルそのものが燃えているような感じだった。間近で観ると、まず、「綺麗~!」とかより「大丈夫か?!」という印象を持つ。スリルがある。ババン!バン!花火は赤、ピンク、緑、青とどんどん色を変えながら、下の階から上の階、上の階から下の階と、時間差のウェーブをつくりながらはじけ飛ぶ。台北101ビルの身体を張ったパフォーマンスから目が離せない。うお~うお~と驚いているうちに花火は終わってしまった。なんと3分弱しかないらしい。花火が終わると同時にビルに「HAPPY NEW YEAR」の文字。パラパラと拍手が起こっただけで、まわりはみんな静か。これだけ大勢の人がいるんだから、うるさいほどの「新年快乐」の嵐、知らない人も抱き合って盛り上がる・・・かと思いきや、みんなもう黙って来た方向に回れ右をしていた。ここからが本当の戦いだ、と言わんばかりに。

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(よくビル燃えないよね・・・)



新年の余韻もそこそこに、私は帰路に集中した。その場に集まった何万人もの人を出し抜いて、地下鉄かバスに乗らなきゃいけない。みんな敵だ!早歩きで30分くらい歩いていると、すんなりシャトルバスに乗れた。そして1時にはホテルについていた。楽勝やん。参加できてよかったな。


次の日は朝からいよいよ南部に移動するので、熱いシャワーを浴びてからすぐに眠った。



続く!
台湾日記6「かわいすぎる民宿」