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(老街(=レトロストリート)散策中)


台湾日記1「台湾旅リベンジ!」
台湾日記2「台北動物園の多摩動物園っぽさ」
台湾日記3「オッサンと私」


ボーダーを着た地元のお姉さんに教えてもらった寧夏夜市で、特に面白かったのはゲームの出店だった。ハイテクなスーパーボールすくいや、麻雀牌やピンポン玉を使ったゲームに、子どもも大人も夢中になっていた。たいていのゲームは点数制で、特典に応じて景品がもらえるシステム。ぬいぐるみや単純なおもちゃとか、なんてことないグッズが並んでいる。一見、子供はまだしも大人が熱中する理由はちょっとわからない。お店のおばちゃんも商売っけがあるんだかないんだか、プラスチックの椅子に座ったりしながら、ゆる~く接客してる。
これは食べ物の屋台にも雑貨の屋台にも言えることだけど、結局夜市は買い物だけのためにあるわけじゃないんだな。毎日、夕方から深夜1時くらいまで、欠かさずわいわいぶらぶらだらだらやっている。いつでもあったかいものを気軽に食べたい私は、とにかく日本にもっと屋台がほしいって思ってるんだけど、それと一緒に、この毎日わいわいぶらぶらだらだらも輸入したいな。目的を決めずに行ける場所。このわいわいぶらぶらだらだらの正体はよくわからないけれど、だけどなんだか必要なものだと身体が求めてるから、人が集まるのかも。

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(スーパーボールすくいがものすごく上手い子供)



この日はまだまだ体力もあったので、他の夜市ものぞきにいった。師範大学の近くにある師大夜市は大学のそばということで若者が多い。食べ物の屋台と服屋さんがぎゅうぎゅうに並んでる。少し歩くと、夜市の中にある広場に、他の出店とは全く違うテンションの露店群を見つけた。学生や若者中心の夜市で、オリジナルTシャツやアクセサリー、小物など、手作りのグッズを売っている出店が15軒くらい集まっていて、なんだかおしゃれな雰囲気。その中に手作りマスク売る店があった。エナメル素材のマスクに口やひげを描いたおふざけマスクだ。しかも描かれていたのは主にオッサンの口元だった。これを装着すると、鼻毛や無精髭が生えているように見える。とてもおもしろいけど、できれば装着したくない。出店で売り子をやっていた背の高いセミロングの美少女に思わず「なんですかこれ?」と聞いてみると、「私が作ったの!」とうれしそうに言われて少し動揺した。

「台湾の美少女手作りのオッサンマスク」

謎は深まるばかりだけれど、全部1点ものだったし、これ以上オリジナルなお土産はそうそうないと思って1つ購入した。買ってすぐ装着して美少女に見せたところ、「可爱~!!(かわいい~!!)似合う」と言ってくれた。嬉しいような嬉しくないような微妙な気持ちになった。

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(思わず買ったマスク)



夜市は夜しかやってないけど、昼から屋台でにぎわっている場所もある。例えば九份(九分)。日本人は九份が大好き。『千と千尋の神隠し』のモデルになったと噂されるほど、フォトジェニックでレトロな街並が人気で、ツアーやガイドブックでは必ず特集されている定番スポット。初めて台湾に行ったときに一番楽しみにしていた場所だけど、実際行ってみると日本人の多さにちょっと幻滅した。それでも少し順番待ちして、定番位置で定番写真を撮ってはしゃいだのを覚えてる。
だけど実は、九份みたいなレトロな街は台湾に無数にある。こういうレトロ街のことを「老街」というんだけど、いま台湾では老街がちょっとブームっぽくて、老街専門のガイドブックもある。伝統的な街もあれば、ほとんど商業用に盛り上げ直したみたいな観光老街もある。現地でゲットしたガイドブックを手にいくつか回ってみることにした。


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(コンビニで買ったガイドブック)



最初に訪れた深坑老街は、いわば豆腐レトロシティ。昔から豆腐が有名で、いまも豆腐がウリ。豆腐好きの人が行くべき老街だと思う。臭豆腐、串焼豆腐、豆乳、豆腐のお菓子、豆腐アイスなどなど、豆腐に特化した屋台がずらっと並んでる。特に串焼豆腐はとても食べごたえがあって、肉がなくても当分これで満足できそうなくらいだなと思った。でもその串焼きのタレが気に入ったので、これで肉を食べたいなとも思った。


次に行った平渓老街は、天燈で有名な老街。天燈は紙で出来た熱気球のようなもので、願いを書いて空に飛ばす。他の老街と同じように食べ物の屋台が並ぶ中、ぽつぽつと天燈専門のお店がある。店先にでていたおばちゃんに、私もやりたい!と声をかけて、150元(=約450円)を払う。たたまれた天燈とマジックを渡されて、願いを書くんだよと教わる。天燈は高さが1mくらいもある縦長の立方体で、4面がそれぞれ違う色になっていた。黄色い面には金運、紫は学業、ピンクは恋愛、赤は健康についての願いを書く。天燈自体がかなり大きいので面積的に願いをたくさん書き込める上に、各種の願いを書くことができてとてもお得な感じがした。学業の願いを書く紫の面には、中国語が上達しますようにと願いをこめて「中文就好」とデカデカと書いたけれど、後で確認したらこの文章自体が間違っていた。


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(金運の面には100万円がほしいと書く)


書き終わるとおばちゃんとおじちゃんが火種を付けてくれる。手際よくあっという間に作業が終わると、どこからともなくまた別のおっちゃんが現れて、天燈を飛ばす場所へと案内してくれた。老街は道が狭くてお店が密集しているし、人も多いので、こんなところで大きい熱気球を飛ばせるわけがない。どこか広場のようなところに行くのかなあと思っておっちゃんについていくと、おっちゃんは線路のすぐ脇で立ち止まった。「ここです」。えっ、こんなところで飛ばしていいの?人も多いし、狭いし、なんと言っても線路の真横。えっ?えっ?ってなってる私をよそに、おっちゃんは天燈に火をつけた。
天燈がどんどんふくらんでいくのを、おっちゃんと私で両側からやさしくおさえる。紙越しに中の火が見えてきれい。あったかくて、もぞもぞ膨らんで、ちょっと光って、生き物みたい。さっきマジックで書いた願いに、魂がむくむく宿って動き出すみたいな感じがして嬉しかった。
天燈はふわっと地面から浮いたと思ったら、真上にすうっと飛んでいった。空にひっぱられているみたいに迷いがない飛びかただった。おっちゃんに教えられなくても、手を離すタイミングが自然にわかった。ほんの3秒くらいであっという間に小さくなって、見えなくなった。
15分くらい飛んだあと、山に落ちていくらしい。


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(たまたま通りかかった人も、みんな立ち止まって見上げる)




最後に訪れたのは三峡老街。昔からこの地方の産業の中心で、赤レンガの街並がおしゃれな場所。ぶらぶら歩いていると、小さな人だかりを見つけた。大道芸みたいなものかな、と思ってのぞくと、5~6人のおじさん達がコマを投げていた。おじさんの3メートルほど先にいろんな高さの台が設置してあって、そこに向かってコマを投げ、台の上で回すというものらしい。すごい。できたらすごい。でも、おじさん達みんな、挑戦しては失敗していた。練習なのか。


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(黙々とチャレンジするおじさん達)


数分じっとながめていると、おじさん達は上手くなってきた。コマが台の上で一瞬まわって落ちたりする。おしい!と思わず声が出る。なぜだろう、まだ出会って間もないのに、おじさん達を応援したい気持ちが芽生えている。黙々と何度もコマを投げるおじさん達。その時、1人のおじさんがとうとう台の上でコマを回すことに成功した。拍手が巻き起こる。やった!できた!すごい!おじさんは真顔で台まで歩いていき、まだきれいに回っているコマを手でぱしっと止めた。え、もう?もう少し回しといていいじゃん、きれいに回ってるんだから。
おじさんたちは次々に成功しはじめた。真ん中の一番高い、2m以上はある台でもいよいよ成功者がでた。観客からひときわ大きい拍手が起こる。でもおじさんは拍手に応えたりおじぎしたりするでもなく、静かに台をゆすってコマを落とす。もうちょっと成功の余韻に浸ってもいいじゃない。やっぱりあくまで練習なのか。照れてるのか。大道芸人にしてはシャイすぎると思った。


つづく!
台湾日記5「世界第9位!台北の年越し」