平成20年(2008)、吉備人出版が手掛ける「吉備考古学ライブラリィ」の一冊として『吉備の飛鳥古墳』を上梓しました。書名の「飛鳥古墳」は、このシリーズを企画された近藤義郎先生(岡山大学名誉教授)の提案によるもので、前方後円墳の廃止(6世紀末)を古墳時代の終焉とみる立場に基づいた新しい用語です。この本では「飛鳥古墳」を、山上や谷の斜面などに単独で立地し、方形や多角形の墳丘を持ち、切石を用いるなどした精美な石室を埋葬施設とする飛鳥時代(7世紀)の単葬墓で、わずかな品々を副葬する「飛鳥様式の古墳」と定義し、「古墳が身分秩序を表象するものとして機能した最後の段階」と評価したのです。

 ところで、この本の執筆にあたり、近藤先生から「切石」という用語を改めてはどうかというご意見をいただきました。タガネではつり、工具でたたいて平滑に仕上げる加工方法にそぐわないという理由からです。近藤先生自身は平成10年(1998)に刊行された北房町(現真庭市)大谷1号墳の報告書において「磨り石」と表現されていましたが、私は「切石」という用語が広く用いられていることもあって殊更に改めることはしませんでした。

 近藤先生は「弥生墳丘墓」、「前方後円墳時代」、「竪穴式石槨」、「周堀」、「隆起斜道」といった用語を提案されましたが、これらすべてが広く受け入れられているわけではありません(「竪穴建物と竪穴式石槨」をご覧ください)。「飛鳥古墳」や「磨り石」もそうした用語なのでしょう。

 

 

飛鳥古墳の墳丘と石室(奈良県石のカラト古墳、奈良文化財研究所飛鳥資料館1981「飛鳥時代の古墳」から)新泉社

 

飛鳥古墳の副葬品(奈良県キトラ古墳、廣瀬覚・建石徹2022「極彩色壁画の発見」新泉社から)