岡山市街地を南東に見下ろす丘陵上にある津倉〈つぐら〉古墳は、全長38mを測る古墳時代前期の前方後方墳です。岡山大学によって2014~2017年に発掘調査が行われ、2020年にその成果をまとめた報告書が刊行されました。

 この報告書の中で気になったのは、西側の竪穴式石室から見つかった土器です。岡山県の前期古墳から副葬土器が見つかるのはたいへん珍しいことですが、その土器もまた少し変わっているのです。高さ27㎝を測るこの土器は、外反して開く口を持ち、胴を内外とも板で撫でて整えた粗雑なつくりの壺形〈つぼがた〉土器です。このような土器は瀬戸内海の沿岸部や島嶼部〈とうしょぶ〉に多いことが知られていますが、内側を削って薄く仕上げる丁寧な土器づくりが行われた岡山平野ではほとんど見られません。

 こうした珍しい土器があえて副葬されたのは、製作・使用した地域(四国北岸を含む)と繋がりがあったのか、厚手につくられた丈夫さが認められたのか、あるいは調査担当者が指摘するように近畿の副葬土器に倣ったのか、土器の中身とともに興味のつきないところです。

 

 

土器の副葬状況と副葬土器(岡山大学考古学研究室2020「津倉古墳」から)