スリッパを折り曲げたような形の奇妙な焼き物(写真)を、みなさんは何だと思いますか?

 現在、東京国立博物館に収められているこの焼き物は、今から40年ほど前に勝央中学校の近くにあった古墳から掘り出されました。高さは19㎝ほどあり、表面には波形の文様が描かれています。その後、出土した場所の発掘が行なわれ、陶棺(焼き物のひつぎ)に取り付けた飾りと見られるようになりました。

 この焼き物がつくられた7世紀(飛鳥時代)には仏教文化が地方へと広がり、この地域でも大海〈たいかい〉廃寺や今岡〈いまおか〉廃寺(いずれも美作市)などの寺院が相次いで建立されました。この焼き物は、こうした寺院の屋根の上に飾られた鴟尾〈しび〉を真似たもののようで、家形をした棺を仏堂になぞらえているのかも知れません。

 同じように、この時期につくられた陶棺の中にはハスの花やつぼみをデザインしたものがあり、仏教という新来の文化にあこがれたこの地の有力者が葬られていたのでしょう。               (勝央町2012「広報しょうおう」685号)

 

   鴟尾形の飾り(美作市2006「美作町史」資料編Ⅰから)とそれを取り付けた陶棺の復元図

   (福部村教育委員会1997「蔵見古墳群発掘調査報告書」から)