美作岡山道路建設に伴い、8月から11月にかけて勝間田高校の実習農園跡地にある小池谷B遺跡の発掘調査を行いました。この遺跡からは、弥生時代中期後半から後期前半(約2100年~1900年前)の竪穴住居や掘立柱建物などが見つかり、当時の集落の様子が明らかになりました。

 中期後半の集落は丘陵の南側斜面部に営まれており、直径約6mの住居の周囲には作業小屋と思われる小型の住居が3軒見つかっています。後期前半の集落は、直径約8mの住居を取り囲むように倉庫と考えられる掘立柱建物4棟が丘陵頂部で確認されました。この時期、美作地域では数多くの集落が営まれていますが、この遺跡もその一つと考えられます。

 ところで、かねてからこの遺跡を丹念に調べていた人がいます。勝央町の文化財保護委員として尽力した長船忠則〈おさふねただのり〉さんです。長船さんは勝間田高校に勤めるかたわら、実習農園から見つかる土器や石器を拾い集めて記録を残しましたが、それはこのたびの調査でも大いに役立ちました。

 長船さんが追い求めた弥生集落の全貌はようやく明らかになりましたが、それも美作岡山道路の完成とともに姿を消す運命にあります。今、長船さんは泉下にあってどのような感慨を抱いているのでしょうか。(勝央町2012「広報しょうおう」676号)

 

小池谷B遺跡の竪穴住居(岡山県教育委員会2016「小池谷B遺跡ほか」から)