いよいよその日がやってきた。


残り数日の余命宣告をされたものの、母の容態は安定していた。


数日後にせまるメンターとの再会も、母の容態次第では、キャンセルせざるを得ない。


それは理解しているが、どこかで早く逝ってくれと焦る悪魔が顔を見せる。


看取れない覚悟


それは出来ている。


もう危ないとなっても、母に会うまでに最短6時間はかかる。


兄妹には、みろくが到着するまで延命治療などせず、母を早く楽にさせてやって欲しいとは伝えている。


母を看取れない覚悟はあるのに、メンターと会えない覚悟がなかなか出来ない。


今日亡くなったら、会えないな。

そんな事ばかり考えてしまう。


最低な息子だな。


そうこうしているうちに、その日はやってきた。


メンターと会える、良かったと思った時、別の感情が湧いてきた。


お母さんありがとう。


頑張ってくれてありがとう。


今まで愛情を注いでくれてありがとう。


ありがとう

ありがとう

ありがとう


メンターと会っている間もずっとこの思いだった。


余命宣告をされた日


早く逝ってくれとばかり思ってた。


でも気づいた。


なぜあの時、少しでも長く生きていてくれって思わなかったのか。なぜ回復すると思わなかったのか。



「ビールが飲みたい」


たまに妹の携帯から、母の声が聞ける。


「分かった。そんじゃ良くなったら焼肉食べに行こう。」


「嬉しいー。ありがとうね。」


携帯の向こうに、泣きながら喜ぶ母がいた。


食事もほとんど取れない母


でもその母がビールと焼肉を喜んでる。


次面会に行けたら、こっそりビールを持って行くつもりだ。


病室で母と乾杯しようと思う。


怒られてもいい。


母もみろくもやり残しがないように最後を迎えたい。