円形のホールの真ん中に
スタンウェイのピアノが
鎮座している
スタンウェイは
風格と
輝きがあって
そんじょそこらの
弾き手には
触られたくない
オーラを発している
今夜は
だれが
弾いてくれるのかな
弾き手があらわれて
あたたかい拍手のあと
白いハンカチを
ピアノの中に置く
座って椅子の高さを
手慣れた手つきで
やや高くした
意外とピアノと椅子の距離が近い
目を瞑って精神統一
そっとピアノに
手を差し伸べ
音を発した瞬間
きらめきの
火花が散った
こんなにも
美しい音が
次から次へと
惜しげもなく
さまざまな
音色で
空間に放たれていく
確実に
大氣を変化させながら
わたしは
息を吞んで
その
一瞬一瞬の指の動きから
目が離せなかった
泣いてはいけない
目が曇るから
そう自分を戒める
それでも
少しずつ
涙が
あふれていく
弾いている間も
至福だけれど
一曲一曲の弾き終わりが
特に好きだ
手のあげ方と
ペダル使いで
音を
大切に
大切に
自分の手から
解き放ち
音楽が
ショパン
スクリャービン
リスト
そして天へのお捧げになる
若さと
情熱
これまでと
いまこの瞬間と
これから
ギフテッド
ただ
それだけではない
