わたしたちが
うまれて
名がついてからというもの
何万回も
何億回も
その名で
呼ばれる
幼い頃は
わたしは
ぼくは
の代わりに
名は
という話し方が
ほほえましいような
受け止め方を
されていたけれど
最近は大人になっても
なんとなく
その言い方が
許されている
甘えん坊みたいな雰囲気が
いつまで続くのか
続けられるのか
どこかで
区切りがくるのだろうけれど
自分の名に
愛着があるということは
幸せなこと
知り合って
とりあえず
名乗りあうことから
はじまり
どうやって
呼びあうかで
距離感がわかるように
名前を呼んだり
呼ばれたりすることで
お互いの関係を
確かめあったり
間合いをとったり
縮めようとしてみたり
水面に浮かぶ鴨の脚のように
なんだか
水面下で
いそがしい
昔は
戦ですら
やあやあ我こそは
と
名乗りあう
この國では
礼にはじまり礼におわる
