さまよい

 

さすらっていた

 

何十年も

 

田舎へあこがれが

 

自分の中で

 

美化されすぎて

 

小さすぎる世界に

 

絶望もした

 

大好きだった場所から離れ

 

大好きになった場所からも離れ

 

とりたてて

 

好きでも

 

嫌いでもない場所に落ち着き

 

同じ店

 

同じ道

 

同じ顔触れ

 

半径二キロ以内で

 

一生を過ごす人たちのように

 

何度も

 

何度も

 

反芻した

 

繰り返すほどに

 

安心と

 

安定と

 

なれ合いに

 

牛のまだら模様のように

 

すこしずつ

 

すこしずつ

 

染まり始め

 

心も

 

身体も

 

朽ちはじめていた

 

このまま

 

飛び上がるほどの幸せもない代わりに

 

すごく嫌なこともなく

 

平穏な歳月を

 

過ごしていくんだろうということを

 

受け入れるほどに

 

心が朽ちていくと

 

身体が

 

空氣を取り込めなく

 

なっていった

 

そのことに

 

氣づいたとき

 

自分の心と身体を一番大切にする

 

と決めた

 

そんな当たり前のことを

 

氣付くのにずいぶんと時間がかかった

 

そのためには

 

いらないものを

 

すべて手放す

 

ひとつひとつ

 

捨て去る

 

その作業は

 

はじめには全く想像できないほど

 

すさまじく

 

感情の揺れも伴い

 

いまだ

 

続いているけれど

 

そして

 

完璧に片付いた

 

という瞬間は

 

まだまだ先かもしれないけれど

 

振り向いたら

 

もう

 

あのときの

 

朽ちかけの

 

わたしは

 

いなかった

 

いまの

 

わたしは

 

わたしを

 

愛していて

 

そのことに

 

心が震えるほどの

 

幸せを感じ

 

ここに

 

います

 

愛と感謝が

 

おのずと

 

溢れだし

 

世界に

 

ミルクのように

 

広がっていき

 

天の川銀河まで

 

流れて

 

ひとつになる