「この花をもっていって」

 

「どうして」

 

「もっていかなければ、きっとあなたは

この約束を忘れてしまうだろうから」

 

「でもおなかの中で

とろけちゃうからもっていかれない」

 

「それならこの花を覚えていて。

花の色だけでもいいわ。

お空の色に似ているから、お空をみるたび

きっと何かを思い出せるから」

 

そうして虹の門をくぐり

 

案の定

 

すべてを

 

忘れてしまった

 

でも

 

空を眺めるのは

 

大好きだった

 

ワスレナグサ色の空を

 

眺めては

 

泣いてばかりいた

 

金星期

 

苦しくて

 

なにも

 

思い出せなかったけれど

 

かすかな

 

ほんのかすかな

 

余韻はあった

 

サヘルの地に

 

降り注ぐ

 

天の川の母乳

 

凍てつく夜は

 

むき出しの地面が

 

6番目のセフィラの熱を

 

ほどよいあたたかさとして

 

伝えてくれた

 

地の呪縛を解き放つ

 

前触れのようなものも

 

すべてに幕がおりることを

 

阻止する愛のことも

 

思考がさまよいがちな

 

わたしを

 

叱咤激励する

 

愛も

 

勿忘草が

 

伝えてくれた