山形県の立石寺(りっしゃくじ)をご存知だろうか。
通称、山寺で、そちらの名前のほうが有名かもしれない。
最近では、化粧品のCMで、その映像がながれていた。
折鶴に誘われて、女の子が山寺を駆け巡る姿が、とても美しかった。
私達は、今年の夏、パソコンでその映像を見て、翌日、家族で出掛けてきた。
山寺は、松尾芭蕉の「閑さや 岩にしみ入 蝉の声」という句で有名な場所だ。
岩は語らないが、その姿は芭蕉の時代、もっと、以前から、そこにある。
切り立つ岩の大きさ、険しさ、力強さはずっしりと、体に重く響いてくるように感じる。
岩の間の木々、草、苔は、生まれては消えて行く命がやどり、神聖さを感じさせる。
芭蕉の時代と同じで、たくさんの蝉の声が聞こえた。
私達は、1000段ほどの長い階段を登り、奥の院についた。
建物はやはりホッとする。
こんな風に、休み、集い、語り、共に祈りたい。
夫は、次にくる時は、朝早い時間に来たいと言う。
人けが少ないなかで、山の静けさや空気を楽しみたいらしい。
NHKの番組『100分de名著 』で前回の放送は「奥の細道」だった。
そこでも、山寺の映像をみた。
番組では、芭蕉の深川から大垣までの旅の行程を、四つにわけて解説していた。
「旅のみそぎ」「みちのくの歌枕の旅」「宇宙の旅」「人間界の旅」
旅立ちの際の、人々との別れ。
歌枕に読まれた、関ケ原の合戦などの名所をめぐる旅。
無常な人の世と、自然や宇宙の不変。
旅を通しての出会いと別れ。
人生はその繰り返しであること。
それは、無常ではあるが、不変の法則なのだ。
山寺は、このなかの「宇宙の旅」に入る場所。
水や空気がとても澄んでいる。
蕎麦やお団子は、本当に美味しかった。
1950年ごろ、このお寺には、観光客増加への対応、利便などのために、全長300メートルほどの巨大滑り台があったようだ。
しかし、転落して負傷するなどの事故がおこり、廃止されたらしい。
それを知ったら、芭蕉はとても驚くと思う。
私達だって、びっくりだ。
きっと、ここに、そぐわないものだったに違いない。
ここにも、消えゆくものと、不変なものがあったのだ。
次は、朝早く訪れて、芭蕉の旅を思いながら参詣しようと思う。