ギフト〜なな色の羽 -83ページ目

ギフト〜なな色の羽

私の中から産まれたがった言葉やお話を書いています

 昨日の朝、NHKのニュースで見たのだが、秋田県に、うどんの自動販売機があるそうだ。

 200円という、お手頃な価格で、本格的な天ぷらうどんが食べられるらしい。

 そこに何十年も通う、独り身の男性は、奥さんのようなものと表現していた。

 雪深い土地で、温かなうどんは、多くの人の心、身体の両方を温めてきたのだろう。

 ある起業家の男性は、起業当初、仕事がうまくまわらず、よくここに食べにきたという。

 一人になって、考える時間が必要だったようだ。

 自動販売機は、そのそばで、灯りをともし、建っていた。

 無言で、温めてくれた。


 誰かを励まそうとして、逆に追いつめてしまうことがある。

 ただ見守ることがいい時もある。

 自分がどうしたいのか、どうすればいいのか、答えはいつも自分のなかにある。

 簡単にはいかないかもしれないが、それを自分自身で見つける。

 だれかに言われたから、動いてみた。

 それで、あたることもあるだろう。

 けれども、自分の心の奥底でイエスという答えがかえってきたものは、ぶれが少ないと感じる。

 仕事でもなんでもそうだが、いつも順調に、うまくまわり続けることは難しい。

 そんな時に、ぶれない軸があれば、自分を立て直すのも早いかもしれない。

 この起業家の男性にとって、この自動販売機は、空腹を満たすだけのものではなく、心を支えてくれる存在だった。


 この男性は、その後、仕事は順調なようだ。

 けれど、月に一度は、この自動販売機を訪れ、うどんをすする。

 その姿に、強い思いを感じる。

 かつて、自動販売機の前で、現状と向き合い、考え、耐えた日の想いを、反芻しているのだろうか。

 周囲の雑音を遮断して、自分と向き合って、対話する。

 そんな孤独な時間も、必要だ。


 この自動販売機は、老朽化が進み、修理部品も手に入らない状態だ。

 うどんの汁が溢れるようになり、味がかなり薄いらしい。

 けれども、多くの人が、存続を望み、大切にされているそうだ。