ギフト〜なな色の羽 -36ページ目

ギフト〜なな色の羽

私の中から産まれたがった言葉やお話を書いています

photo:01



天元台スキー場にいる。

今年の東北は、積雪が少なかった。

ここ山形は、去年のように、家々の周りに、塀のようにそびえ立つ雪はなく、軒から下がるつららが目についた。

町中を抜け、山を登るにつれ、雪に閉ざされた真っ白な世界が広がる。

常緑の樹々から、ときおり、粉雪がサラサラとしずかに流れ落ちる。

砂時計のようだと思った。

この静止した世界に重力があり、そして、時間が確かに流れていることを思い出させる。


ロープウェイの駐車場につくと警備の人に声をかけられた。

″今日のスキー場のコンディション、すごくいいよ。奥さん、日焼け止め必要だよ。〟

私は相変わらず、去年のように答えた。

″いえ、私は滑らないんです。

いえ、滑れないんです。〟


あー。

もったいない。

去年来たときには、スキーヤーの爽やかな笑顔とシャープな滑りに、あんなにも心が動いたのに、今年も私は、夫と子供達を見送った。

ロッジの窓辺に積もる雪を手にすくうと、泡のよう。

この厳しい環境に降る雪が、優しい感触であることに、天からの愛を思う。

パウダースノーは私の体温に溶けて、透明な水へと変わった。

雪は地下へ川へ、また天へと還る。

姿も役目もより透明なものへと移り変わっていくのだ。


夜が更け、激しい風が吹き荒れた。

風が唸り、自然の厳しさを見せつけられる。

暗い大海原の嵐のよう。

穏やかな昼間とまったく違う顔だ。

眩しいほど照り返す白雪も、行き先を遮る暗い雪も、あるがままの命の姿だ。

すべて、これでいいのだ。


暖かい部屋では、子供達は疲れ、布団をはいで、寝ている。

次男は突然、

〝足がぁー。〟

と、叫んだ。

続いて、長男も起き上がって言った。

″これ全部持っていくの。ギリシャに。〟

そして、パタンと倒れて眠った。


私はクスクス笑い、目を閉じた。


明日もきっと、いい天気になるだろう。