ギフト〜なな色の羽 -27ページ目

ギフト〜なな色の羽

私の中から産まれたがった言葉やお話を書いています

新米の季節になった。

お米の袋を開けると、ふわっと新米のよい香りが漂う。

米どころ宮城の〝ひとめぼれ〟だ。

私は力を入れすぎないようにやさしくお米を洗う。

粒のしっかりとした感触。

シャリシャリと音を立てている。

お米が生きている。

土や水、お日さまの光がこの一粒に透けて見えそうだ。

私は、とても幸せを感じた。


今年2月に、佐藤初女さんが亡くなった。

青森に「森のイスキア」と呼ばれる場所がある。

そこで、初女さんは悩みを抱えた人達を受け入れ、話を聞き、食事を共にし、多くの人達を救ってこられた。

私は、『いのちの森の台所』(集英社)という本で、初めて初女さんのことを知った。

この本の中で、自殺しようとしていた青年のエピソードが、とても心に響いた。

青年は家族に勧められて「イスキア」を訪ねた。

彼は、初女さんに話を聞いてもらうのだが、最終的に彼に自殺を思いとどまらせたのは、初女さんが帰りの電車の中で食べるようにと持たせてくれた、おむすびだった。

おむすびがタオルに包まれていたから自殺を思いとどまったというのだ。


初女さんはおむすびを作るのに、お米の一粒一粒が呼吸できるようにふんわりと握る。

ラップで包むと水分が閉じ込められて美味しくなくなるから、タオルで包むのだそうだ。

食べ物に対しても、それを食べる人に対しても、最大限に心を込める。

私は、台所仕事をする初女さんの姿を思い浮かべた。

それは、祈りの姿のように思えてならなかった。


ほんの小さなおむすびがひとつ。

この小さな一粒一粒に込められた命への祈りが、それを食べる人の命への祈りへと移しかえられていくのだ。

命はあらゆる命へ繋がっていく。

深い縁を結んでいく。


東北の地と人とが産み出すお米は、とても美味しい。

私も、ツヤツヤに輝くこの新米で、おむすびを結ぼう。