鹽竈神社は、東北鎮護、陸奥国一之宮、1200年もの歴史ある神社だ。
境内に植えられた鹽竈ザクラは有名で、国の天然記念物に指定されている。
春には大輪の八重桜が楽しめる。
今頃の秋の季節は、花はあまり咲いていないが、樹々の緑が気持ち良い。
苔が広く敷き詰められた庭を散策していると、ゆったりとした時間の流れのなかで、穏やかな気持ちになっていく。
境内へと続く急な階段を上る途中、かすかに潮の香りがしてきた。
足元の砂がジャリっとして、海が見えるかと振り返ってみたが、表の参道からは見えない。
境内では、たくさんの人々がお参りをしていた。
七五三の時期のため、華やかな着物姿の女の子たちが手を引かれて歩いていく。
黒髪に挿したかんざしがくるくると揺れていた。
舞殿から聞こえてくる太鼓の音に誘われていくと、鬼神退治を題材にした「作々結(ささむすび)」という法印神楽が演じられていた。
東北地方に修験者が伝えたと言われ、二人の踊り手が鉾や刀を合わせて、責めの舞を踊っていた。
この結界が張られた異空間は、私の心のなかにも同じくあるように思える。
ドンドンという太鼓の音と共に鬼があらわれ、私は身構える。
戦いの末、鬼を討ち取り、仮面をはぎ取るが、その途端に鬼は消えた。
鬼は自分が生み出した影。
光の仮面、影の仮面に自分の心が翻弄されてしまっているだけなのだ。
真の姿を見極めよう。
人々の声がして、私は我にかえった。
夕暮れが近くなり、境内にあるもう一本の参道を降りていくと、遠くに塩釜港が見えた。
秋空の下に、豊かな海が広がる。
鹽竈様は、海の神様、塩の神様。
大きく力強い霊力で穢れを祓い、この旅の安全を見守ってくださるだろう。