岐阜県にある『養老天命反転地』。
モダンアートを体感できるテーマパークだ。
岡本太郎氏の弟子であり、紫綬褒章を受賞された荒川修作氏と、詩人のマドリン・ギンズ氏の構想によりつくられた公園だ。
岐阜県というと、ノーベル街道と呼ばれる道がある。
富山県富山市から岐阜県高山市までの国道41号線は、この地ゆかりのノーベル賞受賞者が多くいるため、そう呼ばれるようになった。
また、スーパーカミオカンデという宇宙素粒子観測装置のある施設が建つ。
そして、この『養老天命反転地』も特別に印象的な場所だった。
ここは、「極限で似るものの家」という名のメインパビリオンと、「楕円形のフィールド」という2つの部分で構成されている。
建物の中に入ると、椅子やベッドが壁に埋め込まれ、天井からもぶら下がっている。
建物の床は大きく不規則に傾いていて、平衡感覚を失い、必死に壁にしがみつかなければ立っていられない。
家の中は非常に危険だ。
迷路もある。
そして、傾いたソファーが野ざらしでランダムに置かれている。
日常を入り口として、不安定な奇妙な世界に迷い込んでいく。
また、「昆虫山脈」という石を山のように高く積み上げた場所がある。
頂上にある水を求め登っていく昆虫をイメージしてつくられている。
ここを登って行く時、わたしたちは昆虫の動きをなぞることになる。
テーマを与えられることで、限りなくそのものへと近づいていく。
また、自ら意図することで、意図した通りの動きが起こりはじめるのだ。
この『養老天命反転地』は、本来死すべき人間の宿命を反転させる、死なないための装置としてつくられているそうだ。
わたしたちは死を知り、それによって生はより深まった。
物事がひっくり返ると、意識が変わる。
日常の視点で見ると、上下も裏表もある。
けれど、固定点からの視点を離れられたなら、それらは消え去っていく。
そして、あらためて自分が立っている場所に気づくことができるのだ。
この『養老天命反転地』は、怪我をする人も多くいるという要注意の公園だ。
他のテーマパークのことはあまりよく覚えていないが、この場所の記憶は埋もれず、今も鮮明だ。