まわりにはもちろん
引っ越すことも告げられず
さよならも言わずに学校の最終日を終えた。
いよいよ明日の朝に出発だ。
祖母にバレないように
身支度をした。
朝、母親にカバンを渡され必要最低限のものを詰め込む。
飼っていた動物たちに別れの挨拶をして
タクシーが到着と同時に駆け込む。
祖母は見ていたのかな……
とにかく逃げる。
ちょっと離れた駅まで。
そして新幹線に乗り
京都へとたどり着いた。
やっとあの地獄の生活から抜け出せる。
私は自由になった気がした。
私が中1の秋だった。
九州にいたころは気付かなかったが
私の髪の毛は白髪だらけだった。
よっぽどストレスを感じていたのだと思う。
京都へ来てから白髪はなくなった。
ただ待っていたのは思春期だった。
父は絶望を感じたと思う。一番大切なものを一気に失くしたのだから。
ある日突然消えることがどんなことか想像しただけで苦しい。