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またボールが戻ってきて、もう一度投げようとした時、あの体育の高杉先生の言葉を思いだしました。


『夏休みが終わったら、ドッチボール大会をやります。みんな、ボール投げの練習をしてきて下さい。いいですか』


思いだした拍子に、足がすべり、ボールが向こうの公園の入り口へ飛んで行きました。


ちょうど、公園から入ってくる人がいて、ボールをとってくれました。


『なーんだ。このへなちょこボールは。あいかわらずだなぁ』


見ると、あの耳かっぽじおじさんが立っていて、ニヤリッと笑いました。


前会った時と同じ、野球ぼうをかぶり、キツネのような細い目でした。


お腹だけは、さらにポッコリが目立っています。


ガンちゃんも、笑いました。


『おじさん、ふとった?』


『うっ。』


おじさんは、ちょっとうめき声を出して、顔を赤らめました。


でも、またすぐ、いつものおじさん姿に戻りました。


『坊主、いくつになった?』


『ぼうずじゃないけど、ろくさい!』


『6歳は坊主だ』


『ぼうずじゃなくて、ガンちゃん!』


『いいか、耳かっぽじって、よーく聞きな。お前は、へなちょこボールを投げているうちは、まだまだ坊主だ。しっかりボールが投げれるようになれ!』


『みてて、すぐになげれるようになるから。そして、おじさんをあてて、がいやにだしてやる!』


『でたでた、ガンちゃんのくちはっちょうケンジュウ!』


コートの中のお友達がいいました。


『口八丁拳銃か。たいしたカウボーイだ』


ガンちゃんは、カウボーイぼうを脱ぎ、鉄棒にかけました。


ガンちゃんが本気になりました。


『ようし、いっちょやるか!』


耳かっぽじおじさんも、野球ぼうをぬいで鉄棒にかけると、ドッチボールのコートに向かって大股で歩き出しました。



〈完結〉


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