(月刊『家庭科教育』19847月号より)

文部省が初めて全国的規模で実施した「児童の日常生活に関する調査」の結果が530日に発表された。この調査は3月,全国の小学校280校で3年生と6年生の計15,461人を対象に,生活体験,生活習慣,生活技能の67項目にわたって5段階評価方式でアンケート調査や実技調査を行なったものである。

その結果は,「しつけも体験も不足です」「現代っ子やはり手仕事が苦手」「わかっていても動かぬ手」「現代っ子は頭でっかち」などの各紙の見出しに見られるように,予想どおりしつけも生活体験も不足で,テレビで間接体験をすることで,家庭生活に関することが出来るつもりになっているが,実際には出来ない子どもが多いというものであった。

しかし,見通しとして明るいのは,昭和57年に東京で行なわれた同種の調査(深谷昌志放送大学教授による)に比べると,驚くほどの改善が見られるということである。これは,子どもの生活能力の低下がマスコミでもよく取り上げられるようになったせいか,この間,父母が意識的に「しつけ」や「生活体験」に力を入れ始めた,また学校教育,特に家庭科教育でいっそうの努力がされた成果の現れではないかと思われる。