(月刊『家庭科教育』19918月号より)

お米の消費量が年々少なくなっている。とはいえ,日本人にとってご飯はなくてはならない主食である。したがって,量の多少はあるにしても,どの家庭でも毎日のようにご飯を炊いていることであろう。

家電機器メーカーの調理器具のカタログを見ると,その主力商品は炊飯器である。マイコン内臓の炊飯器は,利用者の希望に応じていろいろな機能を果たせるように設計され,購買意欲をそそる多種類の炊飯器が売り出されている。調理器具の主力製品だけに,少しでも良いものをと,改良に改良が加えられているようである。ほとんどの家庭,特に若い人たちの家庭では,炊飯器でご飯を炊いているようである。

最新の炊飯器がどれほどおいしいご飯を炊くことが出来るか私は知らない。我が家ではいまだにお釜(鍋)でご飯を炊いているからである。

おいしいご飯の炊き方に「赤子泣くともふた取るな」という昔からの言い伝えがある。しかし我が家のご飯炊きはふたをしない。結婚した時,妻がふたなしでご飯を炊いているので驚いたが,ご飯の出来上がりが上々なので何も言わずにいた。25年たって初めてその理由を聞いた。「ふきこぼれでレンジが汚れるのが嫌だから」との,きれい好きな妻の答えだった。ふたがないと水の引き具合がよく見えるので,弱火にするタイミングがはっきり分かる利点もある。ふたをしてしばらく弱火にし,わずかの時間強火で仕上げて,その後厚手の布袋に入れて蒸らす。完璧な出来上がりである。

我が家では,よほどのことがない限り,炊飯器を買うことはないであろう。