(月刊『家庭科教育』1983年5月号より)
「サラリーマン世帯の貯蓄,平均591万円」。昭和57年12月末現在の全国勤労者世帯の貯蓄残高についての総理府統計局の調査結果を,3月26日の各紙は,こう報じている。「みんなこんなに貯蓄しているのだろうか」と一般読者は感じたことであろう。
この調査結果の各紙の報道は,1紙を読んだだけでは,十分な理解を得られるものではなかった。3紙を読み合わせることによって次のように理解出来た。「平均貯蓄額(加重平均)は591万円。世帯を貯蓄の多い順に並べてちょうど真ん中に位置する世帯の貯蓄額(中位数)は392万円。最も世帯が集中している階層の貯蓄額(最頻値)は164万円,そしてこの層の貯蓄の約45%は生命保険の掛け金の払い込み総額(正しくは掛け捨て分を除いた貯蓄分)である」。
生命保険は,一般には貯蓄とは考えられていないのでこの分を差し引くと「最も一般的な家庭」の「貯蓄額」は約90万円ということになる。
統計数値は,その取り上げ方によって,かなり違った理解を招くものである。注意して読み,また使用したいものである。