動画サイトでいじくりまわしていたら、
懐かしい名前があった。
バーン・ガニア対ビル・ロビンソン
なんと1974年に日本で行われたAWA世界選手権だ。
場所も懐かしの蔵前国技館。
ビル・ロビンソンは結構、私がリアルタイムでプロレスを見ていた時にも
活躍していたのでアレだが、バーン・ガニアの試合が見れるとは思わなかった。
本の媒体ではたびたび目にしていた「AWAの帝王」バーン・ガニアの試合
しかも日本でこれまた「人間風車」で名を馳せたビル・ロビンソンとの
タイトルマッチ、よくこれ日本で実現したな。
これまた、なつかしの「61分3本勝負」
じっくり鑑賞した。
一本目は20分ばかり探り合いと腕の取り合い・決めあいという地味な展開だが
一瞬の隙をついてガニアの必殺技「スリーパーホールド」が決まる。
2本目は、まだ具合が戻らないロビンソンを執拗にガニアが責めるが
これまた、いい具合に「ワンハンドバックブリーカー」というロビンソンの
必殺技が決まりスリーカウント。
3本目は今度はロビンソンが執拗に腰を責めつつ「ダブルアームスープレックス」
(人間風車)を決めるがスリーカウントは奪えない。
そうこうしているうちにAWAお得意の方法で試合は終わる。
大体アレかコレが多い。
必殺技が出るとちゃんと終わる。
ある意味、そこには様式美があった。
古典落語をじっくり聴いたあとのようなしみじみとした感覚。
「予定調和」などというなかれ。
歌舞伎などと同じく「昔のプロレス」は様式美の世界なのだ。
5分もじっくり「人の話が聞けない」今の子たちからすれば退屈でしょうがないだろうが
そこには「黒門町の師匠」と呼ばれた八代目 桂文楽のような味わいがある。
あのひとつひとつの所作の端々に、えもいわれぬピーンと張りつめた緊張感が走る。
そういった間(ま)が何よりも愉しく、時間の流れも穏やかだった。
プロレスのみならず、落語も、ジャズも本でしか名前を知る術がなかった
スターたちが見れる。これは映画を除けばなかなかなかったことだ。
私が好きなジャズのエリック・ドルフィーやジョン・コルトレーン、
落語の十代目 金原亭馬生師匠、五代目 春風亭柳朝師匠などといった
早逝してしまったスターを「観ること」ができるのは何よりもありがたい。
昔はよかった、とは言わないが、こうした文化があったことを喜び
「神話の時代」のスターがこうして手軽に見れる時代の到来、
技術革新の恩恵に素直に感謝したい。