山東省でキリスト教を信仰する金持ちの家の息子として生まれた馬伯楽は、実家が大嫌いで家を出て独立しようとするが、元々才覚がないため失敗ばかりで親に頼るしか能がない。

 

1937年日中戦争が勃発し馬伯楽は上海に逃げてくる、手元にお金がないため貧しい生活を過ごすが、実家がどれだけ金持かを吹聴して、貧乏な友人に対して留飲を下げなんとか精神のバランスを保っている。

 

そこに妻が3人の子供(上二人が男の子で、末っ子が女の子)を連れて貯金通帳と共に避難してくる。元々大して好きでもなかった妻だったが、背に腹は代えられず妻子を連れて汽車と船に乗って南京、武漢へ逃避行する。

 

しかし武漢に到着したのは良いが、父の友達の世話になるとともに、既婚の身でありながらそこの大学生の娘と仲良くなってしまう。結局娘は別の人と結婚するが、武漢も危なくなってきたことにより、馬伯楽は家族を連れて次のどこか(結局は重慶)に逃げることを考える。

 

----------------------

 

北京の大学で傍聴生をやっていたということなので、馬伯楽は知識分子の中の阿Qと言える。なんでも精神勝利法で片付け、実際の問題解決には一切役立たない男として描かれている。

 

女性らしくとても丁寧な描写が得意な蕭紅の小説を久しぶりに読みました。

 

===================================

書  籍 名:《馬伯楽》

作  者:蕭紅

出版社名:黒竜江人民出版社

出  版 日:1981年9月  第1版

               1981年9月  第1次印刷
自己評価:★★★★
文  字 数:188千字/計61,163千字
====================================