下巻を読み終えました。

 

文化大革命が1966年から1976年までの10年間続いたとして、この小説はその初期である1966年から1969年までの3年間を描いています。

 

文化大革命は前半の3年間が一番行動が激しく、各派閥が権力奪取以外にロケット弾や手りゅう弾等の使用を含め武闘を繰り広げました。後半の7年間は人民解放軍が混乱した単位に進駐して、何とか政治的混乱を除去して元の状態に戻そうとしました。

 

しかし広すぎる中国のこと、混乱を収拾するのにずるずると時間だけがが過ぎていきました。そのため結局四人組が逮捕されるまで文革は収束できず、文化大革命の10年は「失われた10年」と言われています。

 

小説で描かれた時代は1969年まででしたので、江酔章等の造反派と彭其等3名の老革命家間の闘争は決着が付いていません。周恩来総理が彭其司令員からの手紙を読んだことにより、彭其司令員を北京に呼びよせるところで話が終わっています。最後には正義が勝つだろうと示唆されているのみです。

 

この小説は四人組が逮捕される直前の1976年3月から6月にかけて執筆され、三中全会以降の1979年9月に改訂されています。4か月で47万字も書くとはものすごい勢いですね。莫応豊が本当は小説の結末をどのように書きたかったのか興味がありますが、作家自身が既に亡くなっているため、それは叶わぬこととなりました。

 

人民解放軍(空軍)における初期の文化大革命の内部事情を知るのに役立つ小説です。まさに魑魅魍魎のいる世界が描かれていました。造反派の奪権過程が良く解りました。

 

 

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書  籍 名:《将軍吟》

作  者:莫応豊

出版社名:人民文学出版社

出  版 日:1980年 6月  北京第1版

               1980年 6月  北京第1次印刷
自己評価:★★★
文  字 数:271千字(仮)/計59,852千字
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