2019年に開催された第10回茅盾文学賞受賞作品(長編小説)です。
隋の煬帝が作ったといわれる大運河ですが、あまりにも莫大な資金がかかったため隋の滅亡を速めます。その後歴代王朝が大運河の工事を引き継ぎ、途中自然の力によるルート変更などもありましたが、最終的に浙江省の杭州から北京市の通州までを繋ぐルートが完成します。
長い年月を経る間に、大運河の一部は土に埋もれルートが不明になる事もありました。しかし、中国の考古学者たちの尽力もありその全貌が明らかにされ、2014年には「京杭大運河」は世界文化遺産として登録されるに至りました。
この本は、時間的にはマルコポーロの時代(およそ13世紀)、1900年初頭の義和団事件の時代から大運河の世界文化遺産登録に到る現代まで、地理的にはイタリアから中国、大運河を伝って杭州から北京までを描いています。
また、1900年当時の激動の時代を生きのびた人々(現在のお爺さんのお爺さん世代)の生きざまをダイナミックに描いています。それはあたかも中国人のルーツを探すような旅です。
先日大阪大学がリモート会議開催システムのZOOMを使って著者 徐則臣とのフォーラムを開催する計画があり、是非とも参加したかったのですがいろいろ事情があり参加できませんでした。残念!
ルーツ文学がお好きな方にこの小説をお勧めします。
私はこの本を読んで、大運河に対する認識を新たにしました。
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書 籍 名: 《北上》
著 者 名: 徐则臣
出版社名: 北京出版集团公司
北京十月文艺出版社
出 版 日: 2018年12月 第1版
2019年9月 第11次印刷
自己評価: ★★★★
文 字 数: 300千字/計44,651千字
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