ロンドンでの2日間の観劇生活で、最後は新作にしようとこの作品を選びました。2006年に世界的に大ヒットした映画を元に2024年にロンドンで開幕、2025年12月31日にNYでプレビュー予定で、日本ではまだ上演予定なしとの事。他に見た3作と違って話の筋も知らなかったので、前晩に原作映画を見て必死で予習をしました。
物語はほぼ映画のままで親切な脚本でした。ヒロインが有名ファッション誌の女性編集長のアシスタントとして働く事になり、過酷な仕事ながら努力して次第に認められるが恋人との距離も生まれ、大切なものは何かを自問し、そして…という物語。ロビーにはファッショングッズが華やかに展示され、この日も大入満員でした。
先ず、見所は豪華な衣装の数々。舞台全体がファッションショーの趣きで出演者が鮮やかな衣装を纏って客席も練り歩き、エルトンジョン作曲のポップでドラマチックな楽曲も満載で、私的には肩パットの入ったスーツやガラケーなど少し前の光景が微笑ましく、直ぐに大群舞に膨らむ演出もどこか懐かしく、楽しい3時間でした。
一幕ラストでヒロインが編集長に随行してパリへ行く事が決定、二幕は大半がパリの話でした。映画版で大好きだった冒頭のOL達のお洒落な出勤風景や、ヒロインの服装が洗練されていく描写が短時間で済まされたのが残念でしたが、パリの場面は非常に大掛かりなファッションショーが描かれて、これは見応えがありました。
結末は映画版と同じくヒロインが会社を去る決断をして少しほろ苦いものの希望に満ちて終わるのですが、それは題名にある悪魔を見たからと思うものの、私には悪魔の正体が掴み切れずでした。編集長なのか業界の裏側か自身の変化なのか…妻も生前、この映画が大好きだったので一緒に見て感想を交わしたかったと思いました。
ヒロインを演じた女優はビジュアル的には映画版のほうが好みでしたが心情を丁寧に歌い上げる独唱が見事でした。映画版でメリル・ストリープが演じた編集長役をヴァネッサ・ウィリアムズが強い存在感で体現しセリ上がっての登場もセリ下がっての退場も派手で拍手喝采でした。ヒロインの恋人、会社の相談相手の年配男性、憧れの執筆家、先輩OL等、周辺人物も映画とほぼ同じで良心的でした。
ヴァネッサ・ウィリアムズは約30年前にNYで「蜘蛛女のキス」のオーロラをチタリベラの前楽に続いて彼女の初日で見て以来でした。今回も圧巻の存在感で一挙手一投足から目が離せずでした。この作品が日本で翻訳上演される時に編集長役の貫禄と迫力と哀愁を魅力的に演じられるのは誰だろうと考えながらの帰路も楽しかったです。




