柚香トート、星風エリザ、北翔フランツ、愛月ルキーニ、出雲ゾフィーの回を見ました。見所満載、超充実の舞台で目が忙しく、心から感動しました。


この日、ふと「いつもより拍手が少ない?」と感じた瞬間がありました。でもすぐに理由に気づきました。観客の大半がオペラグラスで必死にスターを追っていたからです。私も2時間、ほとんど手放せずでした。とにかくまずは 柚香光トートに釘付けでした。


柚香さんのトートを生で観るのは、新人公演主演以来、約10年ぶりでした。今回最も印象的だったのは、エリザベートへの思いをあからさまな表情では示さないという演技。これこそが今回の柚香トートの核心だったように思います。激情を露わにするのではなく、感情を抑え込む。終幕ですら微笑むことなく、冷たい美しさを纏った姿で舞台に君臨していました。


しかし不思議なことに、その抑制された演技の奥から、確かにエリザベートへの熱い思いが伝わってきました。それは、感情を表情ではなく存在感そのもので示していたからと思いました。一瞬の鋭い視線、言葉のあとに残るわずかな沈黙、舞台の空気を変えるオーラ。そうした細部からエリザへの情熱が滲み出ていて、思わず感嘆してしまいました。


新公時は感情を派手に表現するトートだった印象で、エリザを誘う場面、市民を煽動する場面、ルドルフを凋落させた場面、そして終幕も満面の笑顔でした。それが今回は感情を見せる演技から感情を滲ませる演技へ変化。その深化に10年の時間を感じました。冷徹ながらいざとなれば抗いがたい色気で迫って来そうな彼女独特の艶も磨きがかかり惚れ惚れしました。一度、柚香さんでウィーン版のエリザの命を狙うだけの美しく冷酷なトートも見てみたいです。


星風さんのエリザベートを見たのも新公以来。演技にも歌にもひたむきな感情がこもり圧巻でした。新公の一幕ラストで若々しい美しさに驚いた記憶があります。それから10年。今回は凄絶な美しさ。切々とした成熟した表現から、時と経験の積み重ねを感じました。


そして 愛月ルキーニがとにかくカッコ良かったです。長身小顔の抜群のスタイルで台詞も歌も緩急自在。男役の色気に溢れ、現役時より鋭角的にスリムにシュッとした印象で、まさに“オペラグラス泥棒”。目が離せませんでした。今回のガラコンはどのルキーニもレベルが高く、大人気ですね。


そしてやはり絶品だったのが北翔フランツ。特に今回は歌の素晴らしさに心を打たれました。♪「夜のボート」の、若い頃は色々あったけれど人生の終わりは平穏に暮らそうという、本当にそういう思いに駆られた優しい歌声と情の深さが胸に沁みて、オペラグラスも使えなくなるほど大泣きしてしまいました。 


出雲ゾフィーも現役時より肩の力が抜けた好演。芝居も的確で歌の安定感も素晴らしく見事でした。 北翔さんと出雲さんは決して悪目立ちする歌い方はせず、この日は歌が弱いキャストもいた事で適度に抑制して公演全体としてさりげなくフォローしているように感じられた印象。宝塚ならではのチームワークの良さも流石でした。


アンサンブルの皆さんも、オーケストラも絶好調。この回を見られた至福を感じた舞台でした。次は今週末の大阪千秋楽に参戦します。楽しみです。


余談ですが、梅田で配水管が突き出た事故現場は梅芸から徒歩10分の近距離。あまりに奇妙な事故なので公演前後に見に行ってしました。大事故に至らず良かったです。


↓写真は東京で配信された時の回。円盤化されるならセット(抱き合わせ)販売は止めてね