連日大入り満員を続ける雪組「ベルばら」の二回目の観劇が叶いました。貴重なチケットをお譲り頂いた方、この場をお借りして厚く御礼申し上げます(ご体調は快癒されましたでしょうか)。

初日以来の二回目でした。芝居が熟成されて何度も感動しました。今回も新旧全ての場面が楽しく観劇後に思わず地元民なのに宝塚のお菓子を買ってしまいました。それぐらい、宝塚って本当に楽しいところという、昔懐かしい思いが心地よく蘇ったのでした。

※ここから激しくネタばれします。写真、お借りしました🙇‍♂️。


脚本について、初日を見た時、特にバスティーユが二幕となり、明日進駐と言っていたオスカルとアンドレの「今宵一夜」の次がバスティーユ後のフェルゼン邸に飛び、ジェローデルがフェルゼンに国王一家救出を懇願する場面になった事で、一気呵成に革命に向けて高まっていた感興が瞬時に肩透かしを喰らい、この飛躍が今回も決定稿にならなかった要因の一つと残念にも思ったのですが、

二回目の観劇なので展開を分かっている事に加え、逆に一幕でオスカルとアンドレの出番が終了するエンタメとしての致命傷を回避する事を選んだ今回の構成こそが観客に親切かもと思い直しました。全体的に話がスピーディーで、それぞれ出会ってすぐ愛しあうのも今の若い観客には親切でもあり(私の娘も長編ドラマや伴奏が長い曲は早送りして視聴)、50周年の決定版を放つ自己顕示より観客を楽しませる事を選んだ植田歌舞伎の矜持が微笑ましいほどでした。

それにしても随所のロココ調の豪華絢爛たる衣装や舞台美術の数々が本当に綺麗でした。今年は硬派な作品が続いた事もあり、久々に童心に還った喜びがありました。やはり、一幕終わりと二幕パレードの客席降りがエンタメとして秀逸で、客席中に幸福感が溢れ、感激で泣いている人もいて私も思わず貰い泣きをしてしまいました。一場面一場面を楽しんだ者勝ちの作品だと再認識しました。

雪組陣も揃って気品があり、この品の良さこそが宝塚の魅力であり、今回の成功の理由の一つ。因みに宙組は松風や芹香や花菱や天彩に品がなく言動も下品なのが人気下落の理由と思います。

彩風フェルゼンは凛とした貴公子ぶりで、ゆったりとした物腰が如何にも貴族で、運命の恋に身を焼く男性像を熱演。優れているのはメルシー伯爵に説得される辺りまでが純粋な10代の青年で、次第に成長していくのを示し得た事。脚本上、堅物の大人に見え勝ちなところ、純粋な青年が真実の愛に目覚める共感性の高さが新しいフェルゼンだと感嘆しました。牢獄で王妃に見せた献身からの笑顔、この日は静かに大粒の涙を見せ、見事な有終の美だと感動しました。

やはり朝美オスカルの美しさが絶品。何ものにも変えがたい清らかさで繊細な女心を魅力的に示して素晴らしかったです。私としては後半、バスティーユとパレードの「我が名はオスカル」の歌唱場面が女性らしさを控えて本来の男らしさを発揮できて更に秀逸だと思いました。次期トップ就任に相応しい納得の舞台だと思いました。

初日から二週間で目覚ましい進化を遂げたのは夢白アントワネット。初日はどうしても緊張を隠せずでしたが、この日は特に牢獄場面で号泣しながらの巧演で、私も感動の涙を抑えきれずでした。フランスのために断頭台へ上がっていく後ろ姿に女王としての品位や誇りが感じれられて正に圧巻のヒロイン芝居だったと思います。

私は縣アンドレがやはり大好きでした。独り苦しむ姿が切なく、大ぶりな芝居が包容力のあるアンドレにぴったり。バスティーユでの絶命場面も涙を絞られました。最初の銃弾で倒れて起き上がると手の甲に血糊がついていました。ドキドキする新演出で驚きました。

奏乃ルイ国王の慈愛、真那プロバンス伯爵の優しさ(本作では悪役ではない)、諏訪ジェローデルの貴族的な立ち振舞いや明晰な話術、華世ベルナールの若さと鋭さと強さ、野々花ロザリーの情感ある演技、音彩ジャンヌの悪魔に魂を売ったような激しい悪役芝居、汝鳥メルシー伯爵と夏美グスタフ三世の至芸、下級生達の影コーラスや群舞に至るまで好助演。チームワークの良さも印象的でした。

彩風サヨナラ仕様のフィナーレについては、また、初日時と同様、紙面(?)の都合で割愛させて頂きますが、全員総出演の「セラビ・アデュー」のアカペラの合唱がやはり感動でした。あなたの事を一生忘れない(意訳)という歌詞に込められた深い意味を改めて噛み締めている今日この頃です。

この公演で宝塚に夢を求める新しいファンが数多く生まれているだろうと思います。これからも宝塚らしさを忘れることなく、清く正しく美しい宝塚の再生に歩んで頂きたいです。