花組「アルカンシェル」、一週間ぶりに2回目の観劇が叶いました。やはり、小池先生を始めとしたスタッフの方々の見事な作劇と柚香さんを中心とした出演者の熱演に感動しました。

元々、バックステージ物が好きなので前回は戦禍の中で懸命に舞台を守り抜こうとする人々の姿に共感して号泣したのですが、今回は二回目なので作品全体を俯瞰できて物語以外にも色々なものも見えて来て、更に楽しい観劇となりました。

改めて、冒頭の紳士淑女のレビューシーンから好きだと思いました。松井るみさんの時代を考証した舞台装置と薄井香菜さんの気品のある衣装が本当に美しくて見惚れました。

私も元々二本立ての希望でしたが実際の舞台はショー場面が通常のショー1本分の時間は費やされてショー作品としても楽しめました。物語に不満を感じた人も多いようですが楽しんだ者勝ちの作品なのでショーとして割り切るのも良いかもです。

そして、パリにドイツ軍が迫るという、最初の大人数の歌とダンスの場面が気迫たっぷり。花組は今の体制になってから一本立てがなかった事が頭をよぎり、こういう作品に巡り会えて良かったね、と、ここで早速、私は涙を禁じ得ずでした。

今回、小澤時史さんの音楽の素晴らしさに心牽かれました。親密で覚えやすく、勇壮で、しかも美しく深みのある旋律が次から次に繰り出されて、正に佳曲揃いだと若い才能の登場に感嘆しました。ずっと流れる背景音楽も巧くて聞き惚れました。

私が宝塚で名作だと思う基準の一つにパレードで劇中曲が使われた時に如何に涙を誘われるかというのがあるのですが、例えば私の中では平成星組ベルばら、エリザ初演、スカピン初演、ロミジュリ初演、ポーの一族、蒼穹の昴などに涙しました。

本作も「たゆたえども沈まず」が流れた途端に胸が締め付けられるような思いがして心地よい涙を止められずでした。曲の力強さが作品に心酔している大きな理由の一つだと再認識しました。今回は自動ピアノの演奏を撮っている人も多いですね。

青木朝子先生作曲の主役二人の二重唱も好きです。嵐の後に晴れ間が見えるという小池先生の歌詞も心に響きました。エンタメ愛を歌う永久輝さんと星空さんの二重唱、聖乃さんの不穏なパリの独唱、帆純さん中心のレジスタンスの曲もカッコいい。

小池先生の演出で特に好きなのは二幕8場。桜木涼介さんの振付が迫力あってドキドキしました。第二次世界大戦も終盤となり、なぜ人々は争うのかと狂騒的に歌い踊る大場面。

輝月さん→永久輝さん→聖乃さん→柚香さんと歌い継がれ、舞台装置も大きく回転して大群舞に展開。激しい照明、劇的な映像、轟く音響、うごめく出演者。感動で涙が止まらずでした。

それにしても柚香さんのマルセルは魅力的でした。美しいマスク、引き締まった肢体、そこから繰り広げられる数々の誘惑的なダンス。釘付け。役柄もひたすら精悍でカッコ良い。

星風さんのカトリーヌも好演。正義感の強い造形が的確で、マルセルと結ばれる気持ちの流れも絶妙。彼の家で心を通わせるコーヒーの場面もアドリブで台詞が変わり幸福感たっぷり。

開幕して一週間、下級生に至るまで細かい芝居や表情もついて舞台を更に楽しみ幸せそうなのも嬉しい限りでした。これからも舞台から発せられる元気と感動と幸福感を浴びに通い続けたいと思います(チケットがないので、どうにかせねばです)。