東宝「ムーランルージュ」。開幕から1ヶ月が経過し、やっと観劇できました。この日をマジで、指折り数えて待ってまして、そして、その舞台に感動して何度も泣いてしまいました。
物語はムーランルージュの花形女優と若い青年の恋愛譚。ヒロインは結核を隠して舞台存続と彼との愛を貫こうとするが…。
私は昨年末に韓国版、今春にNY版を見たのですが、悲劇性が高いシリアスな韓国版と、ひたすらエンタメな明るいNY版の両方の美点を兼ね備えた日本版に心底から魅了されました。
※ここから激しくネタばれします。
配役はWキャストですが、この回(8/12昼の部)は宝塚や四季やテレビや映画などで活躍された実績ある演技派が揃い、この作品のドラマ部分が丁寧に描かれて、私は何度も号泣でした。
例えば、主役クリスティン役の甲斐翔真さん。185センチの長身は見栄えがして、躍動感ある動きは若者の陰りない輝きを見事に実像化して眩しいほどでした。芝居の共感性も高く(男前は得ですね)、高音域も力強く歌いこなし(以前の舞台より筋肉がついたのも歌唱力の鍛練のためと思います)、汗と涙が混ざった熱演で、兎に角、一挙手一投足に目が離せずでした。
公爵役のKさんも良かったです。自分の意に沿わない人間は容赦なく排除する冷酷な感じが絶妙、韓国版の男爵に似た方向性でした。日頃のピアノを弾きながら爽やかに歌う姿とは別人の憎たらしさ。歌声も卑劣な感じに変えて聞き応えありました。
実は夜の部に見た伊礼さんの公爵役はNY版に似たナルシストなところもある憎み切れないキャラで、私は二人の対照も楽しかったです。この辺りは、改めて詳述したいと思います。
ジドラー役はトレンディ俳優の印象が強い松村雄基さん。歌はもう少し歌えて欲しいのですが、演技に実直さと一種の苦さがあり、何よりミュージカル界に既視感がないのが新鮮でした。
ロートレック役の上川一哉さんは達観した感じが絶妙で、声の通りの良さは流石の元四季。サンティアゴ役の中井智彦さんの野獣的な歌とダンスの迫力も印象的でした。その他、ダンサーに物凄く上手い人がいて随所に見所の多い楽しい舞台でした。
そして、最も心を揺さぶられたのはサティーン役の望海風斗さん。脚本上、派手に吐血したり戯画的な展開も多いのですが、陽性なコメディセンスを駆使しつつ、やはり、後半の死期を悟ってからの演技が劇的で絶品。歌にも切々とした心情があり、韓国やNYで見たどのサティーンよりも泣けて感動でした。
この作品は挿入された歌の力強さが大きな魅力のひとつですが、洋楽好きの妻はオリジナルの歌手の顔が浮かんで困ったとの事でした。私は洋楽に疎いので、どの曲も楽しめましたが。
実は韓国とNYで見た時に言葉が聞き取れなかったために、何をやっているのか分からなかった場面があり、今回はそこに最も涙を誘われました。
二幕の「ONLY GIRL IN A MATERIAL WORLD」。男爵がサティーンに仲間との決別を迫り、無理やり洋服を着替えさせる場面。Kさんの執拗な緊迫感と、望海さんの無言ながら絶望に震える演技に私は号泣なのでした。
あと、サティーンに激しく罵られた(本当は彼と仲間を思っての愛想つかし)クリスティンが銃の弾丸を入手して死を決意する場面の「CRAZY ROLLING」にも涙止まらずでした。甲斐さんと望海さんの号泣しながらの歌に私も泣きすぎて大変でした。
夜の部については、また、まとめたいと思います。何度も訂正してごめんなさい。