突然ですが、家族でアメリカ旅行へ行って来ました。二週間でNY、ワシントン、ボストン、ロサンゼルスを回りました。妻が好きなダリルホールさんの全米ツアー初日を見て、娘の好きなディズニーランドにも行き、大谷翔平さんのホームグラウンドのエンジェルススタジアムにも行きました。お天気にも恵まれて、良いバカンスになりました。

ブロードウェイでは「ムーランルージュ」を見ました。NYでの観劇は娘が生まれる前、1994年のグレンクローズさん主演の「サンセットブールバード」を見て以来の約30年ぶり。本当は妻&娘に「オペラ座の怪人」を見せたかったのですが閉幕済みで、迷った末に少々クセが強いものの話題作のこれにしたのですが、二人共に楽しんでくれたようで良かったです。

※ここから激しくネタバレします。




物語はパリのムーランルージュの花形女優と若い音楽家の恋愛話。終盤でヒロインは不治の病にかかり、そして…。

先ず、客席に入って度肝を抜かれたのはゴージャスに装飾された美術の数々。巨体な青い象や大観覧車に目を奪われ、豪華絢爛なドレープやシャンデリアの煌めきの中で、開演20分前から妖艶な姿の出演者が刹那的な視線を観客へ投げ掛ける。この独特な趣向が外界から切り離された舞台の虚構のエンタメ感に楽しさを求めるシアターゴーアーにはたまらない。

パックステージ物でもあり、俳優たちは狂騒的に歌い踊る。正直なところ、物語は安っぽいメロドラマで、二人が結ばれるシーンで花火が上がったり、ヒロインも派手に吐血したりするのですが、この徹底したエンターテイメント感、そして、明るく劇場を後にできる作劇がミュージカルの王道を行く感じもして、新しいのにどこかノスタルジックな愛すべき作品でした。

実は余りに楽しくて、NY最終日に再見しました。理解を深めるためCDを買って歌詞を読もうとしたのですがブックレットに歌詞の記載がなくて驚きました。既存曲の構成のための著作権上の問題と思います。洋楽に疎い私は楽しめましたが、洋楽好きな妻はオリジナルの歌手の顔が浮かんで困ったとの事で、チケット代高騰要因でもある既存曲の多用は一長一短ですね。



出演者は2019年開幕時の初演キャストはほぼ卒業済でした。ヒロイン役の女優は不治の病には見えないパワフルな肢体でしたが、ちょっととり澄ました美貌と、そこから不意にさばけたコメディエンヌに切り替わる変化が絶妙で、グラミー賞も受賞したという見事な歌声の素晴らしさに何度も感動しました。

主役の青年はスラッとした二枚目で、とんでもない高音域をいとも簡単に、しかも、大声量で歌いこなす歌唱力に圧倒されました。終演後に楽屋口で愛想よくサインや写真にも応えて、大歓声の中、車で去っていきました。コロナも明けてNYは出待ちも完全復活のようでした。私もサインを貰いました😀。

妻&娘がカッコ良かったと絶賛したのは資金力で全てを牛耳る伯爵役の俳優。映画版の狡猾な雰囲気と違って、女性キラーな色気と容貌がビシッと決まり、フィナーレで出演者達に混じって歌い踊る姿も魅力的でした。ダンディなのですが、妻が彼のインスタをチェックしたところ、筋肉自慢の男性で、それも可笑しかったです。その他、ダンサーに物凄く上手い人がいて、オールスタンディンの中、「あー終わって欲しくない」と切実に思ったほど私には見所の多い楽しい舞台でした。

実は1月に韓国版も見ていまして、その比較も楽しめました。韓国版のほうが悲劇的で終盤で出演者も号泣しながら演じていましたが、NY版はエンタメとしての喜劇感のほうが勝っていたように感じました。日本版は今月末開幕。日本の観客はミュージカルに「感動」と「涙」を求めがちなので(私も💦)、この話の軽い作品をどこまで感動的に仕上げられるが、日本初演を担うスタッフと出演者の方々を応援せずにはいられずです。

宝塚ファンとしてはヒロイン役の望海さんに期待ですね。天井からブランコに乗って現れるところから実力ある彼女は心配ないのですが、肌の露出する衣装も多く、彼女の男役ファンには中々刺激的な舞台と思いますが、凄く難しくて、演じ甲斐のある面白い役柄だと思うので、是非とも応援したく思います(どなかたプレビュー初日のチケットを実費でお譲り下さい)。


韓国版「ムーランルージュ」感想