「二十億光年の孤独」や「生きる」など鋭い感性で生み出した親しみやすい詩で知られる、現代を代表する詩人の谷川俊太郎さんが、今月13日に老衰のため都内の病院で亡くなりました。92歳でした。ご冥福をお祈りします。
そこで、今回は谷川俊太郎さんの詩の中から「ピンポン」(当ブログが卓球関連)と代表作である「生きる」を紹介したいと思います。
●「ピンポン」
硬くて白く小さな球が
人と人との間をゆききする
それで勝負が決まるのだ
ピン! ポン!
それで勝負は決まるのだ
頑なに打ち返し
ピン ポン
一刻も心許さず
ピンポン
もはやたわむれているのではない
これも戦いー
何故か可笑しく
何故か淋しい
地球の光景だ
●「生きる」
いま生きているということ
それはのどがかわくということ
木漏れ日がまぶしいということ
ふっと或るメロディを思い出すということ
くしゃみをすること
あなたと手をつなぐこと
生きているということ
いま生きているということ
それはミニスカート
それはプラネタリウム
それはヨハン・シュトラウス
それはピカソ
それはアルプス
すべての美しいものに出会うということ
そしてかくされた悪を注意深くこばむこと
生きているということ
いま生きているということ
泣けるということ
笑えるということ
怒れるということ
自由ということ
生きているということ
いま生きているということ
いま遠くで犬が吠えるということ
いま地球が廻っているということ
いまどこかで産声があがるということ
いまどこかで兵士が傷つくということ
いまぶらんこがゆれているということ
いまいまがすぎてゆくこと
生きているということ
いま生きてるということ
鳥ははばたくということ
海はとどろくということ
かたつむりははうということ
人は愛するということ
あなたの手のぬくみ
いのちということ
○谷川俊太郎
1931年12月、東京生まれ。詩人。17歳の頃から詩を書きはじめる。52年に第1詩集「二十億光年の孤独」を刊行。鋭い感性と清冽な言葉でつづられた作品は、鮮烈な衝撃を与えた。現在も、翻訳、戯曲、絵本、作詞などジャンルを超えて精力的に活躍を続けており、その作品は世代を超えて愛されている。
