ベネズエラ:マドゥロ大統領夫妻

はじめに——-


この記事は、
政治的な主張や、経済政策の是非、
特定の宗教や国家を評価・批判することを目的としたものではありません。

ここで扱うのは、
国が動くとき、
そこにどんな人間の心理が働いていたのか
という視点。

正義と呼ばれる言葉の裏で、
恐れ、怒り、不安、安心したいという欲求が
どのように物語を作り、力を正当化していくのか。

これは政治分析というより、
集団心理と権力の心理学の話。

遠い国の出来事として切り離すのではなく、

私たち自身が日常で
「納得してしまう瞬間」
「分かりやすい敵を欲しがる瞬間」

その心の動きを見つめるために書いたものです。


——-それでは、つづきを。


今回、何が起きたのか



ベネズエラを攻撃するアメリカ

まず、結論から。

年明けの1月3日。

アメリカは

「麻薬対策」

「奪われた石油を取り戻す」

という名目で、

ベネズエラに軍事介入し、
大統領ニコラス・マドゥロを拘束した。

これが、今回“起きたと報じられている出来事”。

ただし。
ニュースをそのまま受け取ると、
その裏で何が動いていたのかを見誤るわ。

ここからは、
国の本音と、人の心の話。


① アメリカが語った「表の理由」と、そのときの国内事情



拘束されたマドゥロ大統領:手錠のほか、ヘッドホンと目隠しもされている。

アメリカはこう説明した。

マドゥロ大統領は
麻薬密売組織の背後にいる存在であり、
コカインをアメリカへ流し、
犯罪組織を意図的に解放して国内に送り込んでいる。

これは犯罪ではなく

「麻薬テロ」だ、と。

—————

ここで見るべきは、
この言葉が出てきたアメリカ側の背景。

当時のアメリカ国内は、
薬物問題で神経が擦り切れていた。

路上で倒れる若者。
過剰摂取で亡くなる人。
治安悪化への不安。

国民の感情は、
「誰かが悪いはずだ」という方向へ傾いていた。

そこに置かれた
分かりやすい悪役。

それが、ベネズエラだった。

ベネズエラは悪役にされることで、
アメリカ国民の不満や怒りの受け皿となった。

「俺たちは被害者だ」
「原因は外にある」

そう思えた瞬間、
人は安心する。

だから

「国民と世界を守るため」という言葉は、

国内で強く響いた。

拘束されたのは
マドゥロだけではないわ。

妻、息子、側近、軍関係者、ギャングの指導者。

国そのものを

“犯罪組織”として描く構図。

これは昔からある、
恐怖を一つにまとめる物語。

時期も象徴的だった。

正月。
気が緩む夜。
静まり返った大統領邸。

寝室に近い場所まで踏み込む演出。

これは逮捕というより、
力の誇示。

——やろうと思えば、ここまでできる。

そう世界に見せた行為だった。
拘束されたマドゥロ大統領


② 腑に落ちない“世界正義”



冷静に見ると、引っかかる。

実際、アメリカで一番命を奪っている薬物は
コカインではない。

・薬物死の約7割はフェンタニル
・流入はほぼメキシコ経由
・原料の多くは中国由来

コカインは問題だけど、
生産の9割はコロンビア。

ベネズエラ経由は
世界全体の一割程度で、
多くはヨーロッパ向け。

つまり

「最大の原因がベネズエラ」という説明は弱い。


じゃあ、なぜそこまで踏み込んだのか。
 

③ 本当の核心:「石油」



ここで空気が変わる。

トランプははっきり言ったわ。

「ベネズエラはアメリカの石油を盗んだ」
「本来返されるべきものを取り戻す」
「賠償を受ける権利がある」

この言葉には、
正義より感情が混じっている。

長年の未回収。
長年の屈辱。

怒りの記憶として——


④ 70年代、ベネズエラが感じた「危機感」



1970年代、
ベネズエラは貧しかった。

石油は大量にある。
でも掘る技術はなかった。
精製もできない。
売るルートもない。

そこにアメリカが入った。

資金。
技術。
市場。

アメリカ側の心理はこう。

「リスクを取って助けた」

「俺たちが動かした産業だ」


一方、ベネズエラ側の心は違った。

石油は自分たちの土地から出ている。

なのに、決定権は全部向こう。


気づけば
自分たちは
資源を差し出す側に回っていた。

——このままでは、
資源付きの植民地になる。

国有化は反米ではない。

恐怖からの防衛反応だった。


だけどアメリカにとっては、

それは「奪われた記憶」になる。


この感情が、
裁判、賠償、未回収金として
20年以上、燻り続けてきた。


⑤ 中国は、どうやって入り込んだのか



制裁で欧米が撤退したあと、
ベネズエラは孤立した。

そこに中国が来た。

中国は怒鳴らなかったし
正義を語らなかった

ただ
「困っているね」と忍び寄ってきた。

・インフラ資金
・返済は石油
・内政不干渉
・長期契約

心理学的には

静かな依存形成。

道路、港、発電所。

中国は静かに
でも確実に、
生活の血管を侵食していった。

気づいたときには、
石油の未来が中国側の契約に縛られている状態。

アメリカが恐れたのは、
石油そのものではない。

「決定権を失うこと」

それが一番怖かった。


⑥ 地理が示す、アメリカの焦り 



ベネズエラは、遠くない。

カリブ海を挟んだ、
アメリカの裏庭。

メキシコ湾、パナマ運河、
エネルギー輸送の動脈に近い。

反米国家が、
中国・ロシアと結びついたまま
そこに居座る。

アメリカにとっては
心理的にも地政学的にも
耐えがたい配置だった。


⑦ トランプの思惑(心理)



ここで整理するわね。

トランプの動機は一つじゃない。

・石油利権を握りたい
・中国・ロシアから引き離したい
・反米国家を民主国家に作り替えたい
・敵を作り、国内不満を外に向けたい
・選挙を見据えた強さの演出

これは善悪ではない。

権力者の心理として、極めて人間的。

恐れ、焦り、誇示、支持欲求。


全部ある。


⑧ 世界のトップたちの沈黙



各国首脳は内心、こう思っている。

「正義を掲げれば、
どこまでやっていいのか」

プーチンのウクライナ侵攻。
理由は違う。
でも構造は似ている。

この前例は、感染してしまう。

「じゃあ俺もいいよな?」

誰も強く言えないのは、
臆病だからじゃない。

それほど世界が不安定だから。


⑨ ベネズエラ国民の日常と、心の奥



ベネズエラ人の歓喜の集会:避難民多数の隣国コロンビアにて


国民の生活は、限界だった。

ばら撒き政策の末、
ハイパーインフレ。

給料は紙切れ。
パンの値段は毎日変わる。
薬も手に入らない。

子どもを抱え、
隣国へ歩いて避難する家族。

これが現実。

そこに届いた
「解放」の言葉。

喜ぶ人もいる。
疑う人もいる。

直接統治を望む声。
「もう奪うな」という怒り。

希望と不信が同時にある。

心理的に、
一番壊れやすい状態。


人の心が、国を動かす



国を動かしているのは、
制度でも正義でもないわ。

結局は、

人の感情。

恐れ。
怒り。
不安。
承認欲求。

今回の出来事も、
遠い国の話じゃない。

情報をどう受け取るか。
誰の言葉を信じるか。
何を疑うか。

それを決める力は、
私たち一人ひとりにある。

不安定な世界だからこそ、
知ろうとすること。
考えること。
自分を大切にすること。

それが、
振り回されないための
一番の武器になる。